14年アジア大会の陸上男子1万メートル銀メダリストの大迫傑(23=日清食品グループ)が、五輪のメダルへプロ路線を敷くことが26日までに分かった。早大3年だった12年春から米オレゴンに渡って練習してきたが、今後は同地に完全移住する。駅伝には出場しない意向で、実質的なプロ選手として米国を中心に活動する。来年のリオデジャネイロを経て、大目標とする20年東京のマラソン金メダルへ、大きな決断を下した。

 日本男子長距離界のエースとして期待がかかる大迫が、さらなる進化を求める。14年に実業団に入社後も、米国を中心に強化に励んできたが、今後は完全に拠点を移し、日本の住居も引き払う。現在は一時帰国中だが、すぐに再渡米し、世界選手権(8月、北京)選考会の日本選手権(6月、新潟)へ調整に入る。

 早大時代からトラック種目重視を公言してきた。決して駅伝を軽視しているわけではなく、世界で戦うために信念を持ってきた。一番の転機は12年春。マラソンの前米国記録保持者であるサラザール氏が指導する「オレゴン・プロジェクト」に参加した。12年ロンドン五輪1万メートルで金メダリストとなるファラー(英国)、同銀メダルのラップ(米国)ら超一流選手だけが集まる世界最高峰のエリート集団。そこで実力を認められ、アフリカ勢に勝つためのチームに入ることを許された。

 早大卒業後の昨春に米国に渡った。以降も日清食品グループの一員として1月のニューイヤー駅伝では1区区間賞も獲得したが、今後はトラック、マラソンに専念する意向。移動の負担も考え、国内大会も日本選手権などに絞る。所属も含めた4月以降の支援態勢は最終調整中だが、実業団に所属する一般的な選手とは異なり、実質的にはプロ選手になる。

 今月14日に米ニューヨークで行われた大会では、世界の強豪に対し、5000メートルの室内日本最高記録となる13分28秒00で3位に入った。昨年9月にも3000メートルの日本記録を15年ぶりに更新するなど、成長著しい。低迷が続き、世界との距離が遠くなる日本陸上界の希望の星として、今後は5000メートル、1万メートル、マラソンにも記録更新の期待がかかる。

 競技人生の大目標として20年東京五輪でのマラソンで金メダル獲得を掲げる。独自の道を信じ、貫き、悲願へと進む。

 ◆大迫傑(おおさこ・すぐる)1991年(平3)5月23日、東京都町田市生まれ。東京・金井中-長野・佐久長聖高-早大を経て日清食品グループに入社。箱根駅伝は1年、2年で走った1区で、2年連続区間賞を獲得。11年ユニバーシアード大会1万メートル金メダル、13、14年日本選手権1万メートル2位。自己記録は5000メートル13分20秒80、1万メートル27分38秒31(日本歴代4位)。170センチ、53キロ。