女子1500メートルでゲンゼベ・ディババ(25=エチオピア)が3分50秒07の世界新記録で優勝した。

 1993年に曲雲霞(中国)が出した3分50秒46を22年ぶりに更新し、5000メートルで世界記録を持つティルネシュ(30)に続き、“ディババ姉妹”で世界記録保持者になった。

 ディババはレース後「素晴らしい仕事をしてくれた」と、ペースメーカーに感謝の言葉を述べた。400メートルを1分00秒31、800メートルを2分04秒52で通過。前世界記録の曲は800メートル通過が2分00秒71と速かったが、ディババにとってはこの日のペースが最適だった。

 800メートルでトップに立ち、1000メートル付近から昨年のヨーロッパ選手権優勝のシファン・ハッサン(22=オランダ)を引き離すと、1200メートル通過は3分04秒62と曲の通過タイムをわずかに上回った。

 最後の直線を短距離選手のような大きな腕振りで独走し、最後は少しでもタイムを稼ごうと上体を倒してフィニッシュ。世界記録と知ると、トラックに仰向けに転がって喜んだ。

 「エチオピア選手が1500メートルで世界記録を出したのは初めてなの。でも、今日は最初から出せると思っていたし、まだまだ成長できると思うの。3分50秒は切れるわね」

 姉のティルネシュは現在産休中だが、「ティルネシュも喜んでいると思うわ」と、姉妹そろってレコードホルダーとなった喜びを口にした。

 ただ、姉妹でも走りのタイプは異なる。ティルネシュがラスト勝負に強かったのに対し、ゲンゼベは中盤のハイペースで独走に持ち込むパターンを得意とする。

 ティルネシュは5000メートルと1万メートルの2冠を北京五輪で達成したが、ゲンゼベは同じ北京で開催される8月の世界陸上で、1500メートルと5000メートルの2冠を目標としている。「世界陸上の後で5000メートルの世界記録にも挑戦するわ」と、姉の記録更新に意欲を見せた。

 モナコ大会では男子1500メートルのアスベル・キプロプ(26=ケニア)も、3分26秒69の世界歴代3位と快走。男女の1500メートルを含め、8種目で今季世界最高が誕生した。

 また、男子100メートルはジャスティン・ガトリン(33=米国)が9秒78で、2位のタイソン・ゲイ(32=米国)に0.19秒差をつけて圧勝。今季4回目の9秒7台で、ここまで主要大会を欠場しているウサイン・ボルト(28=ジャマイカ)にプレッシャーを与えている。

 ◆今季の女子1500メートルと5000メートル 1500メートルはゲンゼベ・ディババが7月8日にも3分54秒11と、その時点の21世紀最高タイムをマーク。世界陸上でもディババが金メダル候補筆頭だろう。モナコで2位のハッサンが3分56秒05で、タイム的にも今季世界2位。ハッサンやジェニファー・シンプソン(28=米国)らは、ラスト勝負に持ち込めれば勝機も出てくる。

 5000メートルはアルマズ・アヤナ(23=エチオピア)が14分14秒32の世界歴代3位、ディババが14分15秒41の世界歴代4位で走っている。2人の直接対決は昨年のアフリカ選手権ではアヤナが、今年7月4日のダイヤモンドリーグ・パリ大会ではディババが勝っている。こちらの種目も独走に持ち込めたらディババが優位か。