全日本実業団対抗女子駅伝は12月13日、宮城県松島町文化観光交流館前~仙台市陸上競技場の6区間42・195キロで行われる。予選会を2位で通過した積水化学が虎視眈々(たんたん)と上位進出を狙う。

 “スピードランナーの宝庫”と言われるのが積水化学だ。今夏の北京世界陸上5000メートルで決勝に進出した尾西美咲(30)、昨秋のアジア大会5000メートル5位の松崎璃子(22)、そして新人の桑原彩(22)の3人がすでにリオ五輪標準記録を破っている(尾西が5000メートルで他の2人は1万メートル)。

 野口英盛監督はこの3人を1~3区に投入すると明言。チームの顔で、2区を任される尾西は「1区がどんな位置で来ても、自分のところで先頭集団に追いつきたい」と本番の目標を話す。

 コースの後半は向かい風が強くなる事が多く順位が上がりにくい。尾西を2区に配するのは、尾西が起伏や向かい風を苦手とすることが理由だが、それ以上にスピードのある尾西でレース序盤での“貯金”を作りたいという野口監督の戦略が見て取れる。他チームが手薄となる2区で1キロ3分を切るスピードに挑戦できるのは尾西だけだろう。実現できれば優勝候補のデンソーやヤマダ電機を慌てさせられる。

 しかしこのチームの屋台骨は松崎、桑原に森智香子(23)を加えた同学年トリオが担う。松崎が最長区間の3区に、森が4区か6区に登場。今季一番の成長株の桑原はロードに強く上りの多い1区の最有力候補だ。

 1500メートルから距離を伸ばしてきた松崎は、世界陸上代表は惜しくも逃したが、7月に1万メートルで31分44秒86をマークし自己記録を大幅に更新。日本のトップ選手がそろうう3区で勝負ができる力をつけた。森は大東大時代に1500メートルで2年連続日本選手権2位、3000メートル障害の学生記録(当時)を出した実績の持ち主。入社後には5000メートルも安定して走れるようになり、後半区間で抜け出す役目を担う。仲も良い3人だが練習では刺激をしあい、「駅伝で勝ちたいね」と言葉にも出してチームの雰囲気を盛り上げている。

 前回18位だけに「目標はシード権の8位以内」(野口監督)と控えめだが、台風の目となる潜在能力を感じさせるチームだ。