愛知が、史上最大の逆転劇で初優勝を飾った。昨夏世界選手権北京大会5000メートル9位の鈴木亜由子(24=日本郵政グループ)がアンカー9区(10キロ)に登場。4位でたすきを受けて、トップ京都との1分37秒差をひっくり返した。9区の逆転で過去最大だった87年神奈川の29秒差を大幅に更新。五輪イヤーの初レースで大いに弾みをつけた。2位は兵庫、3位は群馬、4位は京都だった。

 異次元の走りだ。愛知の鈴木亜が、3人をごぼう抜きした。8・3キロ過ぎでトップに立つ。「抜き返されるのは絶対嫌。体の動きのままいった」。ぐいぐい差を広げて右手人さし指を突き上げてゴール。「びっくり。本当にうれしい」。昨年、トラック勝負に敗れて3秒差で4位の無念を晴らした。

 1分37秒差の4位でたすきを受けた。「正直、1位になる自信はなかった」。昨年末に左足付け根に痛みが出て、調整は万全ではなかった。米田監督は「たぶん30%ぐらいしか練習できてないと思う。まさか1分半の差を逆転とは…」とびっくり。単純計算で1キロごとに差を10秒ずつ縮めて、鈴木亜は「思ったより体が動いた。とにかく前を追うだけだった」と笑った。

 微差の重要性を知る24歳だ。昨夏の世界選手権、入賞までわずか0秒29差の9位。ほぼ同時にゴールした8位のオランダ選手に勝てば、リオ五輪内定だった。「あそこで勝ち切れないのは弱さと思う。そこは克服するところ」と口にする。

 五輪イヤーを初V発進。「去年(4位)の悔しさを乗り越えられた。世界選手権は0秒29差で入賞できなかったので(五輪で)チャレンジしたい」。名古屋大卒の頭脳派ランナーがリオに向かう。【益田一弘】

 ◆鈴木亜由子(すずき・あゆこ)1991年(平3)10月8日、愛知県豊橋市生まれ。小2から陸上を始める。時習館高-名古屋大-日本郵政グループ。昨夏の世界選手権女子5000メートルは自己ベストを更新し15分8秒29で9位。154センチ、39キロ。