箱根駅伝の伝統校である中大駅伝部の新監督に、世界選手権の男子マラソンに2度出場した藤原正和(35)が就任した。9日、中大が都内で会見を開き、発表した。藤原は「2~3年のうちにシード権を定位置にしたい」と意気込みを語った。

 藤原は中大OB。箱根駅伝では1年時に山登りの5区で区間賞、4年時で2区区間賞を獲得した。03年にホンダに進み競技を続けていたが、この会見で現役引退も発表した。3月いっぱいで退社し、4月から中大での指導をスタートさせる。

 箱根駅伝で過去最多14回の優勝を誇る古豪の復活は、指導経験がない藤原に託された。中大は全92大会中90回の出場を誇る名門だが、96年大会で優勝して以降は苦戦が続く。連続出場を87に伸ばしたが、今年は15位。4年連続でシード権を逃している状況だ。藤原は「うちの大学にいる限り、(連続出場は)死守しなければいけない。プレッシャーは相当あるが、やるしかない」と緊張気味に話した。

 監督就任は数年前からアプローチは受けていたというが、正式なオファーは2月の3週目に入ってからだった。現役引退の話を耳にした野村修也部長が、「一刻も早く会いたいと思った」と就任を打診。ホンダの社員として働くか、ホンダ陸上部のコーチになることを考えていたという藤原はいきなり監督という話に驚いたというが、「挑戦したい気持ちが上回った」と受諾の心境を語った。

 直前までリオ五輪出場を目指していた。だが、1月に臀部(でんぶ)を肉離れし、崩したフォームが戻らなかった。臀部が完治した後の2月4日には、右すねの疲労骨折に見舞われた。五輪代表入りをかけて出場予定だった6日のびわ湖毎日マラソンで無理してスタートラインに立つか、すっぱりやめようかと悩んだという。

 「いい状態を作れない。そこまでの力がない」。疲労骨折の判明から1週間後、引退を決めた。「欲を言えばリオの選考会のスタートラインに立ちたかったけど、これも人生かな」と、笑顔で話した。

 今後は母校の再建に力を尽くす。「僕は挫折して終わってしまうけど、中大の選手を強くすることが陸上界への還元になると思い、引き受けた」。1年目は、選手のスカウトなどで浦田前監督の力も借りながら進めていくという。東京五輪がある2020年は、創部100周年だ。「学生が目指す場所までは、連れていってあげたい」と、箱根駅伝の優勝に向けて言葉に力がこもった。

 藤原は10年東京マラソンで優勝。初マラソン日本最高記録、学生最高記録も保持している。ベストタイムはフルマラソンが2時間8分12秒、ハーフマラソンが1時間2分23秒、1万メートル28分17秒38。