男子10種競技で右代啓祐(29=スズキ浜松AC)が、2大会連続の五輪出場を有力にした。得意の後半5種目で記録を伸ばして、参加標準記録8100点を上回る大会新の8160点。第1日の2位から逆転優勝してリオ切符を引き寄せた。都内で寝具店を営む青木誠一さん(71)から指導を受ける日本記録保持者は、さらなる成長を狙う。2位の中村明彦(25=同)は7929点に終わり、参加標準突破を逃した。

 右代は、倒れなかった。最終種目の1500メートル。他の選手がゴール後に大の字になる中、リオを引き寄せ右腕でガッツポーズ。8308点の日本記録更新は逃すも「悪いところなく10種目を終えた。8300点、8500点を狙える可能性が感じられた」と笑った。

 昨夏の世界選手権は20位に沈み、危機感を持った。昨オフからグルテンフリー(小麦粉を断つ)の食事を導入。8キロ減の体重92キロに肉体改造して「疲れにくくなった」。さらに米国への単身合宿も敢行。新しい取り組みにチャレンジした。

 謙虚な姿勢で意見を聞く。その象徴が、都内で寝具店「青木寝商」を営む青木さんにスプリント指導を受けていることだ。青木さんは35歳で陸上を始め、独学で陸上教室を開いていた。その教室にちほ夫人(29)が通っていた縁で4年前から教えを乞う。練習はユニーク。布団の上にダイブするスタート、布団の裏地で作ったパラシュートを背につけてのダッシュなど。青木さんは「私は布団屋の職人のおじいさん。五輪はおろか大学で陸上もしてない。私のようなものに耳を傾ける。奇跡ですよ」。

 常に成長を目指す29歳は「まずは自己ベストを伸ばす。そして日本人でも(10種競技の)世界で1番をとれる種目があるということをアピールしたい」と意気込んだ。【益田一弘】

 ◆右代啓祐(うしろ・けいすけ)1986年(昭61)7月24日、北海道江別市生まれ。札幌第一高3年で8種競技を始める。国士舘大、同大学院を経て11年スズキ浜松ACに入社し、同年に8073点で日本人初の8000点台。12年ロンドン五輪に10種競技の日本人として48年ぶりに出場し20位。14年に8308点の日本記録。196センチ、92キロ。