プレーバック日刊スポーツ! 過去の9月1日付紙面を振り返ります。2015年の1面(東京版)は、陸上男子短距離のサニブラウン・ハキームが17年春、米国でプロアスリートになることを検討している記事でした。

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 陸上男子短距離のサニブラウン・ハキーム(16=東京・城西高2年)が、17年春に米国でプロアスリートになることを検討していることが8月31日、分かった。高校を卒業後、スプリント大国の米国に移住し、支援企業のバックアップを受けて米国、ジャマイカの陸上クラブに入る計画だ。一方で米国の大学に入学する選択肢もあるという。同30日に閉幕した世界選手権北京大会で世界を驚かせた16歳は、新天地から20年東京五輪の金メダルを目指す。

 驚異の16歳に、ビッグプランが浮上した。サニブラウンが、17年春の高校卒業後にプロアスリート化を検討していることが分かった。陸上関係者が明かした。

 「進路として、海外は考えています。18歳でプロとしてスポンサーと契約して、米国やジャマイカのトラッククラブ(陸上クラブ)に入るとか、プロのコーチをつけるなどの方法です」

 国内の陸上選手は、高校→大学→社会人と段階を踏んで、競技生活を続けるのが一般的だ。午前は社業を行う選手も多いが、一部に「プロ化」する選手もいる。現役では男子5000メートルの大迫はナイキとプロ契約を結び、ナイキ・オレゴンプロジェクトに所属する。00年シドニー五輪金の高橋尚子も05年以降はプロだった。ただそのためには実績や知名度が必要。高卒の18歳がプロアスリートになれば、異例中の異例だ。

 米国の大学に入学する選択肢もある。本場の米国で学生たちと、競い合って実力をつけていく方向性だ。米国の大学は新学期が秋にスタートする。高校を卒業する17年春から期間が空くが「最初の5カ月は向こう(米国)にいって、語学を学べばいい」と同関係者。サニブラウンは英語でインタビューに答えられるが、入学前に現地で語学の準備も整える。

 サニブラウンは、将来の目標にウサイン・ボルト(ジャマイカ)が持つ100メートルの世界記録9秒58の更新を掲げており、海外志向が強い。今回の世界選手権では、100メートルで銅メダルを獲得した20歳ブロメル(米国)の所属する米ベイラー大のコーチと会場で顔を合わせ、連絡先を交換している。米国を拠点にすれば、ボルトの母国ジャマイカに短期的な練習参加も容易になる。最近ではケンブリッジ飛鳥(日大)がボルトの所属する「レーサーズ・トラッククラブ」で合同練習した例もある。サニブラウンも米国、ジャマイカなどスプリント大国に飛び込む構えだ。

 あくまで高校卒業後のプランで、来年は城西高3年としてリオデジャネイロ五輪での活躍を目指す。「どういう形がいいか、模索していくでしょう」と同関係者。サニブラウンは2年後、世界的なスプリンターとなるため、太平洋を渡ることになりそうだ。

 ◆サニブラウン・ハキーム 1999年(平11)3月6日、福岡県生まれ。ガーナ人の父と日本人の母を持ち、小3で陸上を始める。今年7月の世界ユース選手権(コロンビア・カリ)は、100メートルと200メートルでともに大会新の2冠。世界選手権北京大会は200メートルに同種目世界最年少で出場、準決勝進出。自己記録は100メートル10秒28、200メートルは20秒34。187センチ、74キロ。

※記録や表記は当時のもの