陸上競技のダイヤモンドリーグ第13戦ヴェルトクラッセ大会が、9月1日にスイス・チューリヒで開催される。男子棒高跳びなど7種目にメダリスト全員が出場し、リオ五輪のリターンマッチ的な戦いが展開されそうだ。また、ダイヤモンドリーグ実施32種目中、今大会が半数の16種目の最終戦で年間ツアーチャンピオンが決定する。

 男子棒高跳びはリオ五輪で因縁が生じてしまった。

 地元ブラジルのチアゴブラス・ダシルバ(22)が6メートル03の五輪新記録で優勝したが、五輪2連覇を狙った世界記録保持者のルノー・ラビレニ(29=フランス)の試技中に、スタンドから口笛やブーイングが浴びせられたのだ。

 ラビレニは「ブラジルの観客は敬意もフェアプレー精神も欠けている。地元選手を応援する心情は理解できるが、対戦相手への侮辱には落胆した」と怒りを顕わにした。ナチス・ドイツ時代のオリンピックになぞらえたことは謝罪したが、後味の悪さが残った。

 だが、ダシルバが大舞台で6メートルを跳んだことはラビレニも称賛。ラビレニの5メートル98は五輪で敗れた最高記録となった。

 ダイヤモンドリーグはラビレニが今季6試合に出場して4勝、残りの2試合も2位と断トツの成績を残している。安定感のラビレニが雪辱するか、ダシルバの勢いがまさるか。注目の一戦となる。

 女子3000メートル障害には、27日のパリ大会で8分52秒78の世界新記録を出したばかりのルース・ジェベト(19=バーレーン)が出場する。再度の世界新も期待できるが、金メダルを取ったリオ五輪でも8分台で走るなど負荷が大きい試合が続いている。ジェベトに疲れが残っていると、リオ五輪銀メダルのハイビン・ジェプケモイ(24=ケニア)や銅メダルのエマ・コバーン(25=米国)に勝機が生まれる。

 日本からは野沢啓佑(25=ミズノ)が男子400メートル障害にエントリーした。リオ五輪では準決勝の終盤までその組の2番手を走っていたが、10台目のハードルにリード脚をぶつけてペースダウン。決勝進出を逃した。

 チューリヒではメダリストの誰かひとりにでも肉薄し、ファイナリストの力があることを示したい。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する最高カテゴリーの競技会シリーズ。今季はドーハ大会を皮切りに9月のブリュッセル大会まで全14戦が開催される。各大会の種目別優勝賞金は1万ドル(2位6000ドル~8位1000ドル)。各種目は年間7大会で実施され、各大会のポイント(1位10点~6位1点)合計で争われる年間優勝者には4万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝。緊張感あるレースが次々に行われる。また、オリンピックや世界陸上のように1国3人という出場人数の制限がない。ジャマイカ、アメリカ勢がそろう短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目などは、オリンピックや世界陸上よりも激しい戦いになる。