女子棒高跳びでサンディ・モーリス(24=米国)が5メートル00の世界歴代2位に成功し、女子5000メートルではアルマズ・アヤナ(24=エチオピア)が世界記録に迫るなど、女子種目に好記録が多く誕生した。日本選手で唯一出場した男子走り高跳びの戸辺直人(24=安藤財団)は、最初の高さの2メートル20が跳べず記録なしだった。また、ダイヤモンドリーグ実施32種目中半数の16種目の最終戦で、年間ツアーチャンピオンが決定した。

 モーリスは5メートル00に成功するとマットの上を走り回って喜んだが、直後に両手を合わせて祈るような仕草をした。クリアする際に太腿と腹部がバーをかすり、かなり長い時間バーが揺れ続けていたからだ。

 だが、ルール的にはバーが落ちなければ問題ない。屋外では世界記録(5メートル06)保持者のエレーナ・イシンバエワ(34=ロシア)に次いで史上2人目、室内を含めると3人目の5メートルジャンパーが誕生した。

 「5メートルは尊敬されるべき記録です。歴史上3人しか存在しない数字なんですから。私はその1人になったんだわ!」

 コーチは5メートル00を跳んだ時点で競技を終えるべきだとアドバイスしたが、モーリスは5メートル07の世界新に3回挑戦した。クリアすることはできなかったが、来季のことを考えてのことだった。

 「私は今、長さ4メートル45のポールを使っていますが、来シーズンはもっと長いポールを試したいと思っています。新しいポールを使いこなせるようになったら、世界記録は確実に跳ぶことができます」

 美人で、明るいキャラクターでも知られている。ロンドン世界陸上が行われる来シーズン、陸上界に新たなスターが誕生するかもしれない。

 女子5000メートルではアヤナが3000メートルからリードを奪い始め、ヘレン・オビリ(26=ケニア)に約50メートル差をつけてフィニッシュ。14分18秒89は今季3回目の14分10秒台だったが、14分11秒15の世界記録にはまたも届かなかった。

 しかし銀メダルのオビリに快勝したことで、10000メートルで世界記録を出しながら、5000メートルでは銅メダルに終わったリオ五輪の雪辱は果たした。また、タイム上位5レースのアベレージでは断トツのナンバーワン。来季の世界記録更新が十二分に期待できる。

 驚かされたのは女子400メートルに、リオ五輪800メートル金メダリストのカスター・セメンヤ(25=南アフリカ)が出場したこと。前半は予想通り遅れ気味だったが、終盤で400メートルのトップ選手たちを抜き去り優勝してしまった。

 自己新の50秒40は、本職の800メートルを考えても大きなプラス要素となる。セメンヤの自己記録はリオ五輪優勝時の1分55秒28で、世界歴代11位。33年間破られていない世界記録(1分53秒28)との差はまだ大きいが、挑戦していく潜在能力があることをブリュッセルで示した。

 ◆今季の女子棒高跳び

 モーリスが5月のダイヤモンドリーグ・ドーハ大会に4メートル83で優勝したが、その後のダイヤモンドリーグはカテリナ・ステファニディ(26=ギリシャ)が勝ち続けた。

 リオ五輪は、4メートル80台のシーズンベストを持つ選手が7人いて混戦も予想されたが、ステファニディが勝負強さを発揮して金メダル。モーリスもステファニディと同じ4メートル85に成功したが、4メートル70で1回多く失敗したことが響いて銀メダルだった。

 ダイヤモンドリーグのツアーチャンピオンの座はステファニディが獲得したが、ブリュッセル大会ではモーリスに24センチの大差で敗れた。2人の争いは来季も注目される。