日本郵政グループが創部3年目で初優勝を果たした。5区の鍋島莉奈(22)が区間賞の走りでトップに立つと、そのまま逃げ切って、2時間15分8秒でフィニッシュした。有森裕子氏や高橋尚子氏ら五輪メダリストの指導にも関わった高橋昌彦監督(51)の指導で、急成長を遂げたチームは、昨年の12位から一気にジャンプアップした。

 喜びより驚きの方が大きかった。それほど予想外の快走劇だった。高橋監督は「(優勝を)準備してなかった」と少し困惑気味。リオ五輪5000メートルに出場し、2区を走った鈴木も「実感が湧いてない」と淡々としたもの。それもそのはず。今大会の予選会は8位で、大会の目標も「昨年の12位を上回る」と控えめだった。日本郵政グループが150周年を迎える21年に駅伝で優勝するという長期的なビジョンで活動してきた、ダークホースだった。

 創部わずか3年。高橋監督はかつて92年バルセロナ五輪銀、96年アトランタ五輪銅の有森裕子氏の専属コーチを務め、00年シドニー五輪金メダルの高橋尚子氏も契約コーチとして指導に関わった。リオ五輪代表の鈴木、関根もマラソン界のレジェンドを育てた名伯楽の指導を求めて、実績のない新チームにやってきた。

 そのQちゃん育成メソッドがチームの強さを支える。5区で区間賞を取り、チームを1位に押し上げた鍋島は「昼寝をするな」と教え込まれた。高橋尚子氏もやっていた調整法で、昼寝をしないことで、体重の変化を少なくし、調子を安定させた。大会直前の11月にも高橋尚子氏が小出監督とよく練習に訪れていた徳之島で合宿。1周約31キロの「尚子ロード」も使い、最終調整。朝一番から14キロ走など、多い日には1日40キロ以上を走り込んできた。

 リオ五輪後、左足の疲労骨折が判明した鈴木が万全でない中で優勝。強さは確かなものだったが、表彰式後も高橋監督は「まぐれ。次は狙って優勝したい」と苦笑い。まだ実感がない様子だった。【上田悠太】

 ◆日本郵政グループ女子陸上部 日本郵政の創業以来初のスポーツ部として14年4月創部。「手紙を運ぶ郵便」と「たすきをつなぐ駅伝」の親和性から中長距離のチームが作られた。活動拠点は東京・小金井市など。選手は13人で、リオ五輪には鈴木、関根が出場した。2年前の全日本実業団対抗女子駅伝は部員不足で不参加、昨年は12位。