再び歴史に名を刻む。陸上の世界選手権の代表選考会を兼ねる織田記念国際(エディオンスタジアム広島)を翌日に控えた28日、男子100メートルに出場する桐生祥秀(21=東洋大)は会場で練習を行った。京都・洛南高3年の4年前に日本歴代2位の10秒01をマーク。注目を浴びる存在となった地で、今度は日本人初となる9秒台の扉を開く。

 暖かい夕日が差し込むスタジアム。スタート練習など軽めのメニューで汗を流した桐生は、確かな手応えを感じていた。向かい風0・5メートルの悪条件で、10秒08をマークした出雲陸上から5日。「変わらずいい調子できています」。日本人初の9秒台へ-。4年前のあの時を思い出すように臨戦態勢を整えた。

 桐生 僕はこの大会から陸上のリズムが変わった。10秒01を出してから、違う陸上生活が続いている。その場所で(9秒台を)出せたらいい。

 13年4月29日の織田記念。日本記録に100分の1秒差に迫る日本歴代2位の10秒01を出した。全国的には無名だった17歳が、日本の陸上短距離界の中心になった。国際陸連の基準を満たす風向風速計が使用されていなかったため、世界ジュニア記録には公認されなかったが、数字はタイだった。それを超える走りを狙う。「(自己)ベストを出して世界で勝負したい」。10秒の壁を突破し、8月の世界選手権(ロンドン)での決勝進出を見据える。

 4年前に出した自己ベスト以降、昨年6月のタイ記録1度を含めて10秒0台は7度記録した。しかし、記録が公認される追い風2・0メートル以内では10秒01を更新できていない。今日29日は予報によると追い風が吹く可能性が高い。桐生は「(感触は)分かんないです」と苦笑いするが、トラックも高反発。舞台は絶好。人生を変えた地で、悲願達成を目指す。【上田悠太】