■ダイヤモンドリーグ第11戦・モナコ大会展望■

 陸上のダイヤモンドリーグ第11戦エルキューリスが21日、モナコのルイ二世スタジアムで開催される。“人類最速最強”のウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)が8月4日開幕の世界陸上ロンドン大会前、最後のレースとして100メートルに出場する。ボルトと並んで注目されているのは男子400メートル世界記録保持者のウェード・ファンニーケルク(24=南アフリカ)で、人類初の42秒台の可能性がある。

 ボルトがどこまで調子を上げてきているか。それがモナコ大会最大の焦点だ。

 現役ラストシーズンのボルトは6月10日、同28日に100メートルで2連勝しているが、タイムは10秒03と10秒06で今季世界リストでは24位にすぎない。

 その2戦は強敵不在だったが、モナコではアケニ・シンビネ(23=南アフリカ)、チディンドゥ・ウジャー(23=英国)の2人と対決する。シンビネはダイヤモンドリーグ・ドーハ大会優勝者で、今季9秒9台で8回も走っている。ウジャーはポイント対象外大会ばかりだがローマ、ロンドン、ラバトのダイヤモンドリーグ3大会で優勝した。

 ボルトの苦戦が予想されるが最低でも、モナコで若手2人を破ってロンドンに乗り込みたい。

 大会2日前の会見では「いくつかの調整をして、来月のビッグレースに向けてパーフェクトの状態にするために、ここで良い走りをしておきたい。そのために来た」と話したボルト。

 力が落ちてきているとはいえ、毎年のシーズンベストを五輪&世界陸上で出し続けている。大舞台でその年一番の走りができることが、ボルトの大きな武器なのだ。

 世界陸上で優勝するには9秒7台の力が必要だろう。モナコを9秒9前後で勝つことができれば、その準備は整ったといって良い。

 ファンニーケルクは7月6日のダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会に43秒62の今季世界最高で優勝。「ロンドン(世界陸上)の前にもう1試合予定している。そこではグレートな記録をお目にかけられるかもしれない」と、人類初の42秒台への手応えも語っていた(自身の世界記録は43秒03)。

 ファンニーケルクが世界記録を出せば終盤は独走になるが、後半で失速するとイサック・マクワラ(30=ボツワナ)と接戦になる。マクワラは7月14日に200メートルの19秒77(今季世界最高)、400メートルの43秒92(今季世界3位)を同日にマークしている。

 世界記録保持者はボルト、ニーケルクのほかに、女子100メートル障害のケンドラ・ハリソン(24=米国)が出場する。今月に入って12秒28の自己3番目の記録をマーク。自身の持つ12秒20の世界記録も狙える状態に上げてきた。

 女子800メートルにはリオ五輪金メダルのカスター・セメンヤ(26=南アフリカ)がエントリーした。勝てば一昨年9月から続いている連勝が「18」に伸びる。

◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していたが、今年はファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会が実施され、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ・チャンピオンとなる。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4または6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルのほかダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国ごとの出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢がそろう短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。