往路2位の青学大が逆転で4年連続4度目の総合優勝を果たした。往路優勝の東洋大に36秒差で迎えた復路。山下りの6区で小野田勇次(3年)が逆転し、7区の林奎介(3年)が区間新記録で突き放した。2位東洋大に4分53秒差をつける大会新の10時間57分39秒でゴール。昨春に原晋監督(50)と選手たちが対立してチームは空中分解の危機だったが、最後は一体となり、05年駒大以来、史上6校目の4連覇を達成した。

 大手町の高層ビル群に、原監督と選手たちが合唱する青学大の校歌が響く。強風が舞う中、アンカー橋間がゴールテープを切ると、歓喜の胴上げが始まった。史上6校目の4連覇。個の力をまとめて調和させる「ハーモニー大作戦」。作戦は大成功に終わった。

 絶対的な優勝候補だった過去3年より、強さが際立った。往路優勝の東洋大に36秒差の復路。山下り6区の小野田が15キロ地点で逆転すると、一気に4連覇へ突き進む。7区の林が区間新、8区のエース下田が区間賞で独走。一時は6分以上もリードが広がる完勝に、原監督は「こんなに学生は強かったですかね」と喜びをあふれさせた。

 昨春の時点で、この光景は想像できなかった。箱根3連覇と大学駅伝3冠を達成した原監督は多数のメディアに露出。早大大学院に入学したこともあり、練習を見られない日も増えた。3月5日の立川ハーフにも姿はなかった。翌朝のテレビニュース。選手たちは原監督が自民党の党大会に出席していたことを知る。陸上をPRするためのサプライズゲストだったが、知るよしもない選手たちは戸惑いを隠せない。4月下旬、吉永主将、下田ら4年生は監督と話し合った。

 原監督は不満だった。ライバルを他大学ではなく、野球、サッカーのメジャー競技に置く。すべては陸上長距離の認知度を高めるため。東京・町田市内の大学寮には美穂夫人と住み込む。競技だけでなく、日ごろの生活から、選手たちを管理しているとの自負もある。原監督は選手たちに「俺がいないと練習をやらないの? 走れない要因を責任転嫁しているのではないか」と疑問を投げ掛けた。

 連覇につながった練習メニュー、月1度の目標管理ミーティングなどシステムは確立されている。自らの思いをぶつけた選手たちは、監督に頼り、甘えすぎた面があったことは反省した。10月出雲、11月全日本で敗戦。選手ミーティングを緊急に開き、学年関係なく意見を出した。居残りや休日練習が増加。箱根メンバーを外れ、引退するはずの4年生も最後まで練習に参加し、チームを支えた。

 吉永主将は「補欠を含めた全員の意識改革が起き、チームが1つになれた」と振り返った。原監督は「自分がいろいろな仕事で(練習を)離れる中、伊藤主務、吉永主将中心にしっかりまとめてくれた。好き勝手とは違う、真の自主性が完成した」と選手に感謝した。4連覇の快挙は、選手と監督のハーモニーの成果でもあった。【田口潤】