前日本記録保持者の畑瀬聡(35=群馬綜合ガードシステム)が意地の7連覇を果たした。

 5投目に18メートル36を記録。5月のセイコー・ゴールデングランプリ大阪で、18メートル85の日本記録を樹立した中村太地(25=ミズノ)にプレッシャーをかけた。中村は最終6投目に18メートル33を記録したが、わずか3センチの差で畑瀬が勝利。「やっぱり日本選手権(優勝)を取るのと、取らないのは全然違う」とホッとした表情で頂点に立った。

 選手生命の危機よりも、畑瀬は日本一にこだわった。5月初旬、右手中指の付け根部分にある腱(けん)を痛めた。中村が日本新記録をマークしたのは同月20日。医師には「この手で(競技を)できるの?」と言われるほどで、自身の日本記録を破られたことに関しても「正直、何も考えられなかった。試合すら出られるか分からなかったので」と苦笑いで振り返る。

 全力で練習ができたのは6月に入ってからだった。「『(腱が)切れるとオペ』と言われていた。オペするぐらいなら引退。でも、1年(日本選手権を)休むと気持ちが切れてしまう」。モチベーションは7連覇だった。1年後の19年は福岡開催。同県出身の35歳は「そこまではやらないと。引退するなら、そこで勝って辞めたいですね。まだ(引退するかは)考えていないですけれど」と額の汗をぬぐった。

 一方で中村は悔しさをかみしめた。畑瀬との差は「絶対に投げないといけないところで、投げられるか」と分析し「力不足ですね」と自らに言い聞かせるように言葉を発した。先輩の畑瀬は「とにかく強いですよ」と中村を評し、「あと1~2年、中村くんの力を借りながらやろうと思う」とハイレベルでの競り合いを望んだ。

 世界記録は23メートル12で、その差は依然として大きい。そんな世界と近づくために、不可欠な国内のライバル。戦いはこれからも続いていく。