男子800メートルに優勝したエマニュエル・コリル(23=ケニア)の1分42秒05など、6種目で今季世界最高が誕生する盛況だった。日本勢は女子3000メートルの鍋島莉奈(24=JP日本郵政グループ)が8分48秒21の日本歴代2位で8位と健闘。男子400メートルリレーに小池祐貴(23=ANA)、飯塚翔太(27=ミズノ)、桐生祥秀(22=日本生命)、ケンブリッジ飛鳥(25=ナイキ)の走順で臨んだ日本は38秒09で2位だった。

 男子800メートルの最後の直線で、首を縦に振りながらスピードを上げたコリルは2位との差を10メートル近くに広げて圧勝。新たなスター選手候補が誕生した。

 コリルは昨年7月に1分43秒10の17年シーズン世界最高を出したが、8月のロンドン世界陸上は準決勝で敗退した。今回同じロンドン・スタジアムで雪辱を果たしただけでなく、デビッド・ルディシャ(29=ケニア)が12年ロンドン五輪でマークした世界記録、1分40秒91以降では最高タイムをたたき出した。

「私にとって1分42秒05はすごい記録。来年あたりに出したいと思っていたタイムを出すことができた。実績あるメンバーに勝てたことも重要だ」

 400メートルでも44秒21と、世界トップレベルのスピードを持つコリル。昨年の世界陸上がそうだったように駆け引き主体のレースに課題は残るが、ダイヤモンドリーグのようにペースメーカーが引っ張るレースでは力を発揮できるタイプだろう。

 女子3000メートルの鍋島は先頭集団についてレースを進め、1000メートルを2分56秒4、2000メートルは5分57秒1で通過した(通過タイムは日本郵政高橋昌彦監督の計測)。そこからペースが一気に上がり優勝したケニア選手に6秒70差をつけられたが、鍋島もラスト1000メートルを2分51秒1とペースアップ。日本記録に3秒81差と迫った。

 13日のラバト大会5000メートルでは、全体的なハイペースに対応できずに11位。自己記録から大きく後れた。

 今回も残り1000メートルからのペースアップがすさまじかったが、「しっかり反応できていました。ラバトの結果を引きずらず、きちんと修正できた」(高橋監督)という。遠征中に海外勢のトレーニングも目の前で見ることができ、ロンドン大会までの練習はペース設定が自然と上がっていた。収穫は大きかった。

 8月のアジア大会は5000メートルに出場する。中東のアフリカ出身選手や、伝統的にラストに強いインド選手らが強敵だが、鍋島が5月にマークした15分10秒91は現時点の今季アジアリスト1位。この種目日本人初の金メダルを狙う。

 ◆今季の男子800メートル

 7月20日のダイヤモンドリーグ・モナコ大会でニジェル・アモス(24=ボツワナ)がマークした1分42秒14が今季世界最高だったが、2日後のロンドン大会でコリルが1分42秒05と上回った。

 ダイヤモンドリーグ・ポイントは5月の上海大会とローマ大会に優勝し、ロンドン大会でも3位に入ったウィクリフ・キニャマル(21=ケニア)が22点でトップを走っている。

 昨年のロンドン世界陸上金メダルのピエール・ボッセ(26=フランス)はモナコ大会6位と不調。世界記録保持者のルディシャも、16年リオ五輪(金メダル)までは頑張っていたが、昨年後半からレースに出ていない。

 コリル、アモス、キニャマルの三つ巴の争いから、誰が抜け出すかが注目されている。