全日本実業団対抗女子駅伝(25日、仙台)は鈴木亜由子(27=JP日本郵政グループ)の走りに注目だ。東京五輪マラソン最重要選考レースのMGC出場資格を持つ選手は、現時点で8人。今夏の北海道マラソンで優勝してMGC出場権を得た鈴木はその中でも実力上位に挙げられる選手だ。クィーンズ駅伝でも2年ぶりの優勝を狙うチームの主力として主要区間で快走を見せる。

鈴木の特長はスピード、国際大会での強さ、そして耐暑能力の高さだ。

国際大会は15年北京世界陸上、16年リオ五輪、17年ロンドン世界陸上と3年連続トラック種目で代表入り。直前に故障をしてしまったリオ五輪を除くと、15年の世界陸上は5000メートル9位、17年の世界陸上では1万メートル10位と入賞に迫る成績を残した。

耐暑能力の高さは前記の国際大会が真夏に行われたことに加え、今年8月の北海道マラソン優勝でそれを実証した。身体的に強く、夏場でも食事や睡眠といった競技の基盤となる生活がしっかりとできる。そのため高いレベルの練習を継続でき、日本のトップレベルに上りつめた。

マラソンを走ったのはまだ1度だけだが、スピード切り換え能力の高さを発揮した。北海道マラソンでは最初の5キロが17分50秒というスロースタートで中盤までは自重していたが、、26キロで切り換えると50秒以上先行していた選手との差を一気に詰め、33キロで逆転。30キロから35キロの5キロが17分12秒で、このレースの最速ラップを記録した。

自身の性格を「優柔不断」と言う。国立の名古屋大出身という陸上選手としては異色の経歴を持つこともあり、陸上競技を続けるかどうか進路をなかなか決められなかった。42.195キロを走り切れる自信が持てず、初マラソン出場まで迷いに迷った。練習メニューもなかなか決められない。だが一度スイッチが入れば、思い切りの良い走りや行動ができる。

鈴木の特長は駅伝では、先行する選手を追い上げるシーンで最も発揮される。走ってくるチームメイトの思いを、タスキを受けるときに感じるとスイッチが入る。今回、3区を走るようなら高島由香(資生堂)や松田瑞生(ダイハツ)、上原美幸(第一生命グループ)といったトラックの日本代表実績を持つ選手と激しいレースを繰り広げるだろう。高島が区間記録を出したとき、5キロ通過は15分54秒だった。今年の鈴木が追い上げる展開なら、5キロを15分40秒台前半で通過するシーンが見られそうだ。

鈴木の3つの特長から、東京五輪マラソンではメダル候補と期待される。来年9月のMGCの前に、経験を積む狙いでマラソンをもう1レース走る可能性もあるが、現時点ではどうするか決めかねている。クイーンズ駅伝の走りが決断のきっかけになるかもしれない。