今田麻里絵(28=岩谷産業)が2時間29分35秒で日本人トップの4位に入った。10月の全日本実業団女子駅伝予選会で、2区飯田怜(19)が残り200メートルで走れなくなり、四つんばいで進んだ時、中継所で涙し、たすきを受け取った3区のランナー。20年東京オリンピック(五輪)の代表選考会「マラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)」(19年9月)の出場権には35秒届かなかったが、自己記録を2分25秒更新した。

仲間の思いを背負った今田が、前評判を覆す快走を見せた。中間点すらハーフの自己記録を上回る数字で通過。30キロすぎで日本人トップを争っていた床呂を突き放した。最後は左足がしびれ、力は残っていなかったが、2時間32分0秒の自己記録を一気に更新した。MGCには届かず、悔しさもあるが「MGCの切符に挑戦できる兆しは見えてきた」。次戦を予定する名古屋ウィメンズ(来年3月)への手応えもつかんだ。

全日本実業団女子駅伝の予選。中継所で待っていた当時の心境は「止めにいった方がいいかな。でも勝手なことはできないし…」。膝を地面につきながら、血まみれで前へ進む姿は感動の声もあった一方で、選手生命を縮める危険性などから批判も相次いだ。自身も右足のけがで、19歳で1度引退。岩谷産業に入る前はアルバイトと両立しながら復帰するも5度の骨折を繰り返した経験を持つ。けがの苦しみはよく分かるだけに「止めに入っていた方がよかったかな」と後悔もあった。「外に出たくない。後ろ指をさされているんじゃないか」とも思った。

ただ「こんなところでつまずいていても意味がない。しっかり走らないと飯田にも岩谷産業にも悪い」と心に決め、今大会への出場を決意。飯田にはレース2日前に会い、激励された。結果を残すしかなかった。

レース後。飯田からメッセージが届いた。「感動しました。自分もこれからもっと頑張ろうと思いました」。それを見た今田は「自分の走りを見て、また頑張ろうと思ってくれたのが一番うれしい。どれだけ感動を与えられるかも仕事」と笑った。【上田悠太】