全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。中部予選優勝のトヨタ自動車が、連覇中の旭化成、東日本王者の富士通と並んで3強に挙げられている。15、16年に連覇を達成したチームで、当時は駅伝での活躍が目立ったが、この1年で3人がMGC(※)出場権を獲得。今大会は“マラソンのトヨタ自動車"の駅伝での戦いが注目される。

2月の東京マラソンで宮脇千博(27)が2時間8分45秒、10月のシカゴ・マラソンで藤本拓(29)が2時間7分57秒、そして12月の福岡国際マラソンでは服部勇馬(25)が2時間7分27秒で走りMGC出場を決めた。MGC出場権を2人が獲得しているチームは日清食品グループ、MHPSの2チームあるが、3選手が権利を得ているチームはトヨタ自動車だけだ。

藤本は11月の中部実業団駅伝で1区(12.1キロ)を走り2位のトヨタ紡織・大池達也(28)に34秒差をつける独走。さらに12月の甲佐10マイル(約16キロ)でも優勝し、シカゴ後も快走を続けている。「マラソンが駅伝にも生きている、というよりも、マラソンを目指す過程でトレーニングと私生活を、取り組む姿勢を含めて見直したことが生きているのだと思います」と自信を見せる。過去のニューイヤー駅伝では1区(12.3キロ)で起用され、15年がトップと6秒差の4位、17年が同9秒差の10位、さらに18年が同11秒差の10位と好走してきたが、今年は最長区間(22.4キロ)の4区でも通用する選手に成長した。

服部は前回こそ故障のため欠場したが、入社1年目の17年に4区で区間5位。区間賞の市田孝(旭化成)から12秒差の好走で、チームの順位を3位から2位に押し上げた実績がある。14年ぶりの日本人優勝を果たした福岡国際マラソンから1カ月。そのハードスケジュールをどうこなすかが課題となり、出場区間は直前の判断になるが、佐藤敏信監督(56)は「(3、4、5区の)主要区間に行ってもらう」と服部に対する期待は大きい。服部自身も「優勝が目標。しっかり貢献したい」と意欲的だ。さらに「設楽さん(悠太=Honda)さん、井上さん(大仁=MHPS)といった強い選手と当たっても、勝負できる状態に持っていきます」と力強い言葉を口にした。

3人の中では宮脇が、4月に恥骨、9月に左大腿(だいたい)骨を痛め、中部実業団対抗駅伝出場を見送っている。しかし10月後半には負荷の高い練習も再開した。ニューイヤー駅伝では12年から14年まで3区、1区、4区で3年連続区間賞を獲得。トヨタ自動車の3回の優勝時も1区、3区・5区で快走を見せ栄冠に貢献した。「駅伝の距離なら走れると思いますし、ニューイヤー駅伝は8回の経験がある」と本番を虎視眈々(たんたん)と見据える。

5区と3区で区間賞を取ったこともある主将の大石港与(30)も、内臓疲労による不調から回復してきた。窪田忍(27)も15年、16年と4区を走って連覇に貢献した実績を持つ。主要区間候補選手の数でも、旭化成に迫る選手層の厚さだ。

藤本はマラソンで好成績が続く今季のチームを、次のように見ている。「おのおのが強い目的意識を持っていることが伝わってきます。(服部)勇馬の練習は僕にはできないこと。まねをすればいいわけではありませんが、彼の競技への姿勢には学ぶべきものがあります。良い相乗効果が出ていると思います」。

“マラソンのトヨタ自動車"として挑む今回のニューイヤー。どんな走りを見せるか、注目度は高い。

 

※MGC=マラソン・グランドチャンピオンシップ。東京五輪マラソン代表選考会。。出場権獲得選手一覧はこちら>>