陸上の世界選手権(27日開幕、ドーハ)代表を取り消された男子10種競技の右代啓祐(33=国士舘ク)の近況について、指導する岡田雅次監督(57)が18日、都内で取材に応じ、明らかにした。

この日午前11時頃、右代から電話があったという。「先生にご迷惑をかけていませんか?」。今回の事態が公になったのは右代のツイッターから。日本陸連の手違いにより、代表取り消しとなった“被害者”だが、事態が大きくなってしまったことを心配していたという。

岡田監督は「本当に悔しいだろうけど、批判をしないんですよ。そういう立派な人間なんです」と話した。

その上で岡田監督は日本陸連にくぎを刺した。右代がツイッターで事情を明らかにしなかったら、どうだったのか-。「会見をしたと思いますか?」とした。

岡田監督は16日、右代に世界選手権にエントリーできていない現状を伝えた。それを聞いた右代はぼうぜんとし、残念がっていたが、同時にこうも口にしたという。「もっと強くなればいいということですね」。世界選手権の大舞台。もう若くもなく、33歳。当然、やり切れない思いはあるはずだ。しかし、東京五輪へ向けて、前を必死で向いているという。

右代は4月のアジア選手権、6月の日本選手権を制した。日本陸連から代表内定とされた後の3カ月は、大舞台で万全を期すため、10種競技の試合には出ず、調整に専念していた。「本当にコンディションが良く、選手生命を懸けるような意気込みでやっていたのは事実」と話す。

右代の今季ベストは7822点。出場枠24人で参加標準記録8200点の突破者が21人。24人目は南米王者の8046点だった。右代の得点は世界ランク39位(1国3人)で国際陸連から「出場するレベルにない」と判断された形。

ただ自己ベストは8308点。5年前の記録だが、現在も「8200点を狙えるモチベーションでやれていた」。もしも世界選手権へ出場できない可能性を知っていれば「2試合は出られた」(いずれも岡田監督)。シーズンベストを伸ばせる可能性もあったはずだ。

岡田監督は言う。「国の代表。さらに右代の場合はアジアを代表して行くはずだったのですから」。諦めず、出場できるよう交渉を続けてもらうよう日本陸連へお願いを続けるという。