米スポーツ用品大手ナイキは5日(日本時間6日)、男女マラソンの世界記録更新など好記録が続出している「厚底シューズ」の新モデルを29日から発売すると発表した。

厚底シューズを巡っては、世界陸連が1月31日に新ルールを発表したばかりだが、この「エアズームアルファフライネクスト%」という新作は、8月の東京五輪含め、今後の大会でも使用できるルールの範囲内となる。

英紙ガーディアン(電子版)によると、底の厚さは3・95センチ。世界陸連の新規則では、底の厚さは4センチ以下に制限されたが、超ギリギリセーフだ。

この試作品を男子マラソンの世界記録保持者エリウド・キプチョゲ(ケニア)が使い、昨年10月の特別レースで非公式記録ながら史上初めて2時間を切った。当時はプレートが3枚入っていた。しかし、反発力を生む炭素繊維のプレートは世界陸連のルールの範囲内となる1枚に。プレートも前足部の方を硬めにする工夫をしたことで、推進力も高まっているという。また靴裏の前足部には「ズームエアポッド」というクッション性と反発性を両立するものを追加した。

世界陸連の新規則では、今年4月30日以降の大会で履くシューズは4カ月以上市販されていることが条件で、東京五輪に間に合う。また3月1日の東京マラソンは4月30日以前のため、この新シューズを履くことも可能だ。

同社のフットウエア・イノベーション担当のトニー・ビグネル氏は「ランナーにとって、1マイル(約1・61キロ)を4分で走ることや、マラソンを2時間で走るような記録は、進化の指標、人間の可能性を試す障壁でもあります。キプチョゲが達成したように、このような障壁が壊されると、私たちの可能性に対する思い込みが打ち破られるのです。障壁はイノベーターにも刺激を与えます。アスリートのように障壁が目の前に出てきた際に、私たちは違った考え方をし、フットウエアデザインにおいて画期的な進歩を推し進めることが求められます」と話している。

従来モデルの「ヴェイパーフライ」シリーズは、マラソン日本記録保持者の大迫傑(28=ナイキ)、前日本記録保持者の設楽悠太(28=ホンダ)、ハーフマラソンで日本新記録を樹立した小椋裕介(26=ヤクルト)ら国内外の多くのトップ選手に実戦で使用している。大会新記録だった箱根駅伝でも約84%の選手が着用していたことに象徴されるように、長距離界で高速化が進む一因とされる。この新作も大きな話題を集めそうだ。