壁にぶつかる女子100メートル日本記録保持者の福島千里(22=北海道ハイテクAC)に北海道陸上界のアニキから迷いを一掃する金言が送られた。9日、岩見沢市内の国体合宿に参加し、クロアチアで行われたコンチネンタル杯後、本格的に練習を再開した。

 悩めるスプリンターに救いの手を差し伸べたのが、同じ国体合宿に参加中の北京五輪メダリスト高平慎士(26=富士通、旭川大高出)だった。同杯で自身の日本記録に及ばない11秒42で6位に終わり、世界との差を痛感した福島について「負けを忘れてしまうと選手は終わる」と、これからさらに成長するための通過点ととらえた。

 同じ道産子として期待も高いだけに、高平の熱いメッセージはさらに続いた。「今は苦しい時かもしれないが、海外で経験を積むことが大事」。五輪や世界選手権に2度出場し、北京五輪400メートルリレーで銅メダルを獲得し、栄冠もつかんだが、その陰では外国勢との戦いで苦汁もなめてきた。その経験をもとに生まれた独自の哲学を持つ。「今はメディアに言ったことがどう書かれるか楽しんでいる。海外で経験を積めば周囲を気にせず走れる」と説いた。

 福島は今後、19日にはスーパー陸上(川崎)、10月には千葉国体に出場する予定。「今は100メートルも200メートルも走る。ロンドンまでにたくさんの経験を積んで、1日もムダにしたくない」。道産子の先輩からのエールを胸に刻み、1つ1つ確実にステップアップする。【石井克】