女子マラソンで日本歴代2位のタイムを誇る渋井陽子(31=三井住友海上)が3日の東日本実業団対抗駅伝で約11カ月ぶりに戦線復帰する。昨年8月の世界選手権のマラソンを故障で直前回避し、その後は同12月の全日本実業団対抗女子駅伝の出場を最後に長期休養。休養中は音信不通の「沢尻エリカ状態」で自分を見つめ直した。脱力した姿勢で競技に臨むことを心に決め、復帰戦を復活への出発点にする。

 渋井の肩から力が抜けていた。約11カ月ぶりのレースとなる前日。時折、仲間と談笑しながら、最終調整した。昨年12月以来となる実戦へ「風邪のおかげで、いい感じにフニャフニャしています。緊張はまったくない」と鼻声で笑った。

 昨年12月の全日本実業団対抗女子駅伝で優勝に貢献したのを最後に姿を消した。芸能界では沢尻エリカが音信不通となっているが、渋井も「エリカ様のようになった」と振り返る。チームに所在をほとんど知らせず、長期休養に入った。チーム関係者もあえて連絡は取らなかった。渡辺監督は「次の方向性が見えない時期だった。じゃあ、見えたらやればいいということになった」と雲隠れ状態を受け入れた。

 そして渋井は旅に出た。「2カ月ぐらい国内を1人旅したり、温泉に入ったり、山に行ったりした。そういう機会がなかったから」。緩やかな時間が流れる中で、発見したことがある。

 渋井

 自分の弱さを知った。今までは頑張りすぎていた。使命感が強すぎて周りが見えなくなっちゃう。力みにもつながる。今は風邪をひいても、その状況に委ねちゃいます。

 昨年の世界選手権の女子マラソンは無念の故障欠場。責任感の強さが故障の一因にもなった。だが、自分探しの旅の末に「脱力」の素晴らしさに気付いた。本格的に練習を再開したのは7月になってからだった。まだピーク時には及ばず、駅伝仕様の練習しか積んでいない。来年の世界選手権や12年ロンドン五輪に対してもノープラン。「流れに任せます」。渋井はエース区間の3区ではなくアンカーの6区から、復活への1歩を歩み出す。【広重竜太郎】