<第29回全国都道府県対抗女子駅伝>◇16日◇京都市・西京極陸上競技場発着9区間42・195キロ

 1500メートル日本記録保持者の兵庫・小林祐梨子(22=豊田自動織機)が、区間新で12年ロンドン五輪へ弾みをつけた。上り坂4区(4キロ)に挑戦し、小雪交じる向かい風の悪天候を乗り越え、06年に小崎まり(京都)が樹立した記録を2秒更新する12分41秒の走り。チームは9位に終わったが、阪神・淡路大震災の前日に地元兵庫に勇気を与えた。京都は2年ぶり14度目の優勝を果たした。

 視界の先に雪化粧の比叡山があった。初めて走る上り坂の4区。小林は山から吹く小雪交じりの冷たい風をまともに受けた。3位でタスキを受け、2・4キロ地点で一気に先頭に立った。気温は大会史上最低の4度。悪条件にもかかわらず、区間記録を2秒更新する快走だ。09年の2区に加え、4区でも区間新を樹立した。

 「起伏が激しい区間で向かい風もきつかったです。明日は震災の日ですし、今回はいい走りがしたいという気持ちが強かった。チームは9位だったけれど、少しは(被災者に)勇気を与える走りができたかな」。

 忘れられない記憶がある。1995年1月17日。6歳だった小林は、兵庫県小野市の実家で震災にあった。停電で真っ暗になった部屋で、こたつに潜り、揺れが止まるのを待った。恐怖に耐えることしかできなかった。今は走ることで神戸に復興を訴えられる。

 「過去の(区間)記録ではなく、これから未来の誰かが作る記録と闘っていました。高校から全国レベルの主要駅伝で(計)99人抜きだったんですけれど、今日2人抜いたからこれで101人抜き。でも満足はしていないです。12分20秒台で走りたかったから」。

 目標は12年ロンドン五輪にある。世界で勝つため、今後は日本記録を保持する1500メートルではなく、5000メートルに照準を合わせていく。現在は社内留学制度を利用して岡山大に通い、卒論を執筆中だ。

 「しばらくは卒論で忙しいけれど、終わったらまた本格的に動きだします」。ロンドンへと続く長い、長い道のりを、小林が雪の古都から走り始めた。【益子浩一】