<第16回全国都道府県対抗男子駅伝>◇23日◇広島市平和記念公園前発着◇7区間48キロ

 箱根に続き、東海大の村沢明伸(2年)が広島でも驚異的なスピードを見せつけた。長野県の3区(8・5キロ)で出場し、順位を26位から一気に2位まで上げた。今年の箱根駅伝2区で17人抜きを達成したが、今回はそれを上回る「24人抜き」。タイムは23分48秒で区間記録に届かなかったが、大会史上3位タイの激走だった。体調不良で東洋大の柏原竜二(3年)が欠場する中、「学生最強」をあらためてアピールした。栃木が2時間19分31秒で初優勝した。

 予想外の26番目でタスキを受けると、怪物・村沢の闘争心にスイッチが入った。トップの兵庫から43秒差という出遅れ。それを巻き返すため、最初の1キロを2分40秒で突っ込んだ。身長166センチながら、大きなストライドでグングンと追う。前方を走る集団を次々とのみ込んでいく。沿道からは大声援だ。そしてラスト200メートルで首位の兵庫・八木に並んだ。最後の競り合いに力尽きたが、24人抜きという離れ業だった。

 過去のごぼう抜きは、97年大会の3区で進藤吉紀(秋田)が「30人抜き」したのが最多。箱根の2区で17人抜きした余韻が覚めやらぬ中で、周囲の期待に応えた。それでも村沢は満足しなかった。「何位で来ようが、自分の走りを心がけた。自分の仕事は変わらない。チームをトップに引き上げること。(2位で)悔しい」。チームが2位だったこともあり「自分の力不足」とまで言い切った。3人兄弟の末っ子。常に兄の背中を追いかけた根っからの負けず嫌いだ。

 熱い視線を送ったエスビー食品の田幸監督は「あのスピードで押し切れる強さはほかにいない。日本の宝です」。東洋大・柏原との直接対決は実現しなかったが「推進力なら村沢の方が上」と絶賛した。4月から佐久長聖高の両角速監督が、東海大駅伝部の監督に就任。恩師との二人三脚で来年の五輪出場さえ期待できるところだが、両角監督は「無理はしない。長い目で大事に育てたい」。進化し続ける村沢は気負わず、焦らず、世界への扉を開けていく。【佐藤隆志】