日本陸連など主催者は12日、東日本大震災の影響を受け、今日13日に予定されていた名古屋国際女子マラソンの中止を発表した。8月世界選手権(韓国・大邱=テグ)の代表選考を兼ねていたが、代替レースについては15日の日本陸連の理事会で決まる。先月の合宿中にニュージーランド地震で被災した町田祐子(30=日本ケミコン)は、練習拠点が宮城県。帰るに帰れない状況に「走っている場合じゃない」と肩を落とした。一方で、野尻あずさ(28=第一生命)は「ふさぎ込んでもしようがない」と無念さを胸にしまい込んだ。

 合宿中のクライストチャーチで被災した4選手が、再び地震ショックに見舞われた。前日までは開催の方向だったが、一夜明け、被害状況の大きさを受けて中止が決定。中村友梨香、重友梨佐(ともに天満屋)らは終日ホテルにこもった。そんな重苦しい空気の中、町田と野尻が口を開いた。

 町田

 後輩が仙台で避難しているみたいで。これから宮城に戻ることはできないし、どうすれば…。

 宮城県大崎市が練習拠点。会社は大きな被害を免れたが、仲間の安否を気遣った。「マラソンは最後」という思いを秘めての名古屋入りだったが、「走っている場合じゃない」。今後への不安を募らせた。

 一方の野尻は気丈に振る舞った。「海外から続いた。日本に帰ってきても地震の影響が出たが、ふさぎ込んでいてもしょうがない」。富山県出身で、ニュージーランドで多くの富山出身者が被災。帰国した際は「複雑な気分です」と目に涙を浮かべたが、自らの心にあえてムチを入れた。

 日本陸連幹部はこの日午前、有力選手を指導するコーチ15人を集め、今後の選考レースについて協議。結論として、4月中の国内外の大会で代表選考することを決めた。15日の理事会後に、指定レースが発表される。4月となれば国内では長野、海外ではロンドン、ロッテルダムなどがあるが、沢木専務理事は「現時点でほかに言えることはないし、何も決まってない」と話すにとどめた。

 世界選手権に向け、強行日程を強いられることになった。天満屋の武冨監督は「精神的な影響はあると思う。それでもこれを乗り越えるようでないと、世界では戦えない。そういう気持ちでないと…」。未曽有の大地震は4選手だけでなく、日本女子マラソン界に大きな試練を与えた。【佐藤隆志】