アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずき(33=シスメックス)が、来年3月の名古屋ウィメンズ(旧名古屋国際)マラソンへの出場が有力となったことが22日、分かった。ロンドン五輪代表選考レースの名古屋で、現役生活の集大成として背水の勝負に挑む。野口は左脚などの故障で昨年12月以来レースから遠ざかっていたが、今日23日の実業団女子駅伝西日本大会(福岡・宗像市役所前発着)で3区(10・2キロ)にエントリーされた。

 野口がロンドンを照準にとらえた。経由するのは来年3月の「名古屋」だ。10カ月ぶりの復帰戦を前に、22日は福岡・宗像市内で駅伝の開会式に出席。広瀬監督は「駅伝で感覚を戻してマラソンを。(出場レースは)絞っています」と五輪選考レースへの出場を明言した。

 選択肢は事実上、名古屋に絞られた。関係者は「今大会後にマラソンの練習を始める」と明かしており、3カ月後の大阪国際へは準備期間が足りない。しかも大阪は高速レースといわれ、野口がタイム勝負するにはリスクが高い。失敗が許されないだけに、十分な調整期間を経て名古屋で勝負する公算が大きい。

 8月に本格的な練習を再開した。今月初めには熊本・阿蘇合宿で10日間の走り込み。昨年12月の全日本実業団対抗女子駅伝以来となる今回の復帰戦は、3区10・2キロを任せられるまでになった。

 08年北京五輪で大会前に左太ももを肉離れ。再発を繰り返し、昨年末には左足首を疲労骨折した。年頭からは4カ月も走れない日々…。7月の札幌国際ハーフで復帰予定も、6月には左臀部(でんぶ)を肉離れして出場を断念した。常に「引退」と背中合わせの厳しい立場が続く。

 それでも決して心を折らず、再びスタートラインに立った。広瀬監督は「コツコツと筋力トレーニングやリハビリして体形も変わりない。いいですよ、今は」と心配なく送り出す。野口もイキイキとした表情で「ケガの功名」とばかりに前を向く。

 野口

 いい練習ができているので不安はないです。故障して古傷(左太もも)の痛みが奇跡的にゼロに近い状態まで回復した。故障があって良かったととらえています。久しぶりにロードを走れることに、喜びと感謝の気持ちがあります。

 復帰への闘いから復活への戦いへ。春の名古屋を制するために、野口は厳しい冬も走り抜く。【近間康隆】