福士加代子(29=ワコール)が魂の走りで被災地に勇気を与える。今日18日号砲の全日本実業団対抗女子駅伝(宮城・松島町中央公民館前~仙台市陸上競技場、6区間42・195キロ)の開会式が17日、仙台市内で行われた。各チームのオーダーも発表され、マラソンでロンドン五輪出場を狙う福士は最長の3区(10・9キロ)でエントリー。永山忠幸監督(52)は被災者からの手紙が出場のきっかけになったことを明かした。

 異常なピリピリムードが本気度をうかがわせた。各チームの選手が集う開会式、ワコール陣営に友好気分などなかった。エースが集う最長10・9キロの3区。勝負どころを任された福士に駆け寄る報道陣を、関係者が「明日にしてください」とさえぎった。トレードマークの笑顔を封印し、福士は「使命」に向けて口元を引き締めていた。

 3月、東日本大震災が起きた。青森出身の福士も人一倍気をもんだ。そんな時、被災者から1通の手紙が届いた。「福士さんの走っている姿が見たい」。今年から宮城開催になった今大会へのメッセージだった。永山監督は「1年前から福士を外すつもりだったけど、思いが通じるのであれば、これも私たちに与えられた使命だと思います」。

 昨年のこの大会後、永山監督は「福士頼み」からの脱却を図った。「これからは福士抜きで戦う」と選手に告げ、10月の西日本大会はメンバー外。しかし“翻意”の起用にも福士は「そのつもりでいます」と答えたという。思いは師匠と同じ。マラソンでのロンドン五輪出場を狙うなら、調整に専念した方がいいかもしれない。でも1人のランナーとして、人間として、できることがある。秘める思いを抱えながら、福士が杜(もり)の都を全力で走り抜ける。【近間康隆】