ロンドン五輪をかけた東京マラソン(東京都庁~東京ビッグサイト42・195キロ)は今日26日、午前9時10分にスタートする。レース前日の25日、記者会見で舌戦を繰り広げた川内優輝(24=埼玉県庁)と藤原新(30=東京陸協)が、再びライバル心をあらわにした。川内のレース前日の「勝負メシ」がカレーライスと耳にするや、藤原新は故郷長崎のカステラで対抗する考え。「鬼に金棒、藤原にカステラ」と大見えを切った。それを受けて川内は「25キロ以降、高め合っていけばいい記録が出る」と発言、目標の2時間7分台について「間違いない」と断言した。

 市民ランナー同士のバトルは、まだ終わっていなかった。この日、“先制口撃”を仕掛けたのは先にホテルから出てきた藤原新だった。前日の会見について「川内君が先陣切って、殴りかかってきてくれたんで。楽しいファイトができた」とにやり。そして、川内がレース前夜の勝負メシとしてカレーを食べることを聞くと、黙っていられなかった。

 藤原新

 母(江美子さん)が応援に来てくれているんですけど、カステラ持って。福砂屋のカステラ、これ限定でしょ。本当にいいんです。「鬼に金棒、藤原にカステラ」。ただ、食べ過ぎちゃいそうで怖い。

 カステラは脂質と糖質が豊富。ランナーにとっては重要なエネルギー源を、故郷・長崎の味が後押しする。昨秋、所属先を失いプロから一転、フリーとなった。再起をかける傷心の男にはうれしい援軍だ。今回はゲブレシラシエを意識し、国内トップランナーが1キロ3分(42・195キロ換算で約2時間6分35秒)ペースのところを、2分58秒(約2時間5分10秒)で設定し、練習してきた。高速レースを予想し「面白い体はできたと思う」。

 その30分後、今度は川内が練習のため外へ飛び出した。約12キロのロードワークを終え、約1時間後にホテルへ。そこで藤原新の対抗策を聞かされると、対決姿勢こそやんわり否定しつつ、負けん気をのぞかせた。

 川内

 本当に25キロ以降、しっかり高め合っていければ、いい記録が出ると思う。けん制し合って日本人トップというよりも、いい記録を出した人をみんなで(五輪へ)送り出した方がいい。2時間7分台は間違いなくいける。自信もある。

 今月5日の丸亀ハーフをともに走り、先着した藤原新の好調ぶりは実感している。ただライバルよりも、今回は7分台という目標に意識を集中。「瀬古さん、中山さんら名ランナーがたどり着かなかった記録。僕にとって1つの大きなポイントになる」。その先に見えるのが五輪、と言わんばかりだ。そして先方の「鬼に金棒、藤原にカステラ」発言もどこ吹く風に、「昼はこれからうどんを食べ、夜はカレーです」。ぶれない男・川内は駆け引きなし。いつも通り真っ向勝負を挑む。【佐藤隆志】

 ◆東京マラソン展望

 日本陸連はペースメーカーを2段設定する。ゲブレシラシエはエチオピア五輪代表を狙うため、2時間4分台が必要。そのため1キロ2分55~57秒ペースの高速組と、日本の五輪選考条件となる1キロ3分組に分かれる。スタートの東京都庁~四谷~水道橋と下り坂。下りを利してゲブレシラシエ、キプチュンバ、メコネンらが引っ張る。それを藤原新が追い、ロスリン、川内ら国内招待選手が第2グループを形成する。

 全体的になだらかな高速コース。東日本橋の25キロでペースメーカーが外れると、ここからが勝負。37キロ付近の佃大橋からは上りで強風にあおられる難所。先行する藤原新を、川内がジリジリと詰めていく。実績ある藤原正、伏兵・幸田がどこまで粘るのか。ゲブレシラシエを中心とした優勝ラインは2時間4~5分台、日本人トップも7分台で決着しそうだ。

 ◆男子マラソンの五輪代表選考

 昨年9月の世界選手権と同12月の福岡国際、今月26日の東京、3月4日のびわ湖が対象レース。具体的な設定基準はなく、各大会の上位から「五輪での活躍が期待できる」3人を選出する。福岡で日本人トップ3位の川内が現時点で最有力候補。世界選手権はメダル獲得した最上位者が内定するはずだったが、当該者はいなかった。