<大阪国際女子マラソン>◇27日◇長居陸上競技場発着(42・195キロ)

 「トラックの女王」福士加代子(30=ワコール)が2時間24分21秒で自己記録を更新し、日本人トップの2位に入った。一時は独走態勢に入った福士は、残り920メートル付近でタチアナ・ガメラシュミルコ(29=ウクライナ)に逆転され、過去2度失速した大阪でまたも初優勝を逃したが、2位を死守。8月のモスクワ世界選手権の有力候補に躍り出た。

 気持ちよく抜かれた。先頭で戻ってきた長居陸上競技場の外周コース。残り920メートル付近でガメラシュミルコの影が見えた。「スコーンとやられて何もできなかった」。30キロ地点から独走で一時は2位以下を140メートル以上も引き離したが、土壇場でトップを明け渡した。ゴール直後に「ごめん、負けちゃった」と大声で観客にわびたが、日本人トップの2位に拍手が起こった。

 大阪は08年と昨年に出場して終盤に大失速し、マラソン代表としての五輪を逃した。08年は4度も転倒した。3度目の大阪は涙ながらに出場を直訴した。所属先ワコールの永山監督は「三度目の正直というが、二度あることは三度あるともいう。私も福士も自信を持っていけるというのは1度もなかった」という。

 先輩の力水でパニックを回避した。最初の5キロ給水で「あんなにいっぱいあると思わなくて(ボトルが)見えなくて」とスペシャルドリンクを取り損ねた。先頭集団の中で「私って(ゼッケンは)何番だっけ」と大騒ぎ。すぐに並走していた渋井から「水だよ」とボトルを渡された。同じく小崎からも「私の給水もいる?」と声をかけられた。

 福士

 すごく助けられた。これはいけるなと。2人がいたから精神的に安定した。25キロ過ぎで去年よりも全然いけるなと。(過去の)トラウマはありません。

 2時間24分を切れず、世界選手権の一発内定は逃したが、有力候補に躍り出た。今後は米ボルダー、エチオピアなどを候補に高地トレーニングを予定。さらに永山監督は「海外の強い選手とどれだけガチンコ勝負できるか」と話し、4月のロンドンマラソンなども視野に入る。

 福士は、世界選手権について「ラスト5キロでいける自分がいればいいかなと思います」と課題を挙げた。「トラックの女王」として五輪3度、世界選手権4度を経験した30歳が、マラソンランナーとして初の世界舞台を照準に捉えた。その先に16年リオ五輪が待っている。【益田一弘】

 ◆福士加代子

 ふくし・かよこ。1982年(昭57)3月25日、青森・板柳町生まれ。五所川原工高で陸上を始める。00年ワコール入社。長距離代表で五輪は3大会連続出場。5000メートルとハーフマラソンの日本記録保持者。160センチ、45キロ。血液型A。