<スーパー陸上2009>◇23日◇男子やり投げ◇川崎市等々力競技場

 男子やり投げの村上幸史(29=スズキ)が、世界選手権(8月、ベルリン)銅メダリストの実力を証明した。自己ベスト83メートル10には及ばなかったが、3投目で国内大会での自己最高記録82メートル41をマーク。87メートル台のベスト記録を持つテーム・ウィルッカラ(フィンランド)の優勝記録82メートル60に、わずか19センチ差の2位に入った。最終6投目も80メートル21を記録し、自身初の1日2度の80メートル超えにも成功。残る年内5大会での85メートル到達を誓った。

 村上の3投目に1万5634人の観衆が沸いた。87メートル23の自己ベストを持つウィルッカラが81メートル83を出した直後、大観衆の手拍子の中での投てきは80メートルのラインを軽々と超えた。国内大会では自己最高の82メートル41。5投目でウィルッカラに再逆転されたが4、5投目をパスした村上は最終6投目でも80メートル21を記録した。昨年までは01、04年に1度ずつ出しただけの80メートル超えを初めて1日2度マーク。「80メートルを2回出せたのが1番の収穫。安定感が出てきた。今は狙った大会で80メートルが出せる」と胸を張った。

 やり投げの世界大会で日本人初のメダリストとなり今大会の注目度は随一だった。帰国後の約1カ月で50件以上の取材が殺到し「いいかげんな性格なので持ち歩いていなかった」という手帳を常時に携帯し、スケジュール管理に追われた。「まぐれだと思われないためにも、失敗のできない大会なので、ベルリン(世界選手権)よりプレッシャーはあった」と振り返った。

 これまでは3投目までにすべての体力を使い切るつもりで大会に臨んでいた。だが世界選手権から帰国後、約2週間の地元愛媛合宿で、体に負担のない投げ方を身につけた。以前は多くて週2回しかできなかった、やりを投げ込む練習が同合宿では週3、4回に増えた。助走で得た力を投げにスムーズに移行できるようになった。この日は不在だった浜元コーチから携帯電話を通じ、左足の使い方などアドバイスを受け、愛媛合宿時のフォームを思い出した。

 今後は25日開幕の全日本実業団選手権(岡山)をはじめ、精力的に5大会に出場する。この日の2度の大台突破には「こういう積み重ねが85メートルにつながるはず。年内に85メートルを出したい」と自信をつかんだ。世界の表彰台を目指す村上の戦いが再び始まった。【高田文太】