<全国高校バスケット選抜優勝大会:明成95-86福岡大大濠>◇男子準決勝◇28日◇東京体育館

 明成(宮城)が福岡大大濠(福岡)を95-86で下し、創部5年目で初の決勝進出を決めた。出だしから先行。第2クオーター(Q)で追いつかれたが、持ち味の粘り強いディフェンスからの速攻で後半、突き放した。初優勝と、男子東北勢5年ぶりVをかけて29日の決勝・福岡一戦に臨む。

 試合終了まで残り5秒。93-86とリードの場面での出来事だった。相手反則でフリースローをもらい、勝利は確定的。そんな状況で佐藤久夫監督(60)は畠山俊樹主将(3年)を呼び、真剣な表情で指示した。そして試合終了。選手たちは淡々と、すぐに応援席へあいさつに走った。

 「勝っても大喜びするな。高校生らしく、しっかりした態度で試合を終えなさい」。これが佐藤監督の指示だった。明成の歴史を刻む勝利の瞬間でも、あくまでも謙虚に-。仙台の監督として99、00年と連覇の実績を持つ佐藤監督の人間的指導、冷静な采配を象徴するシーンだった。

 「なかなか結果が出ないチームだったが、緊迫した試合を戦ううちに、一戦ごとに成長した」。そう話し佐藤監督は目を細めた。同点に追いつかれた時は、大声で怒鳴った。「個人技では相手が上。うちは心と積極性で勝つしかない。弱気になったと見た時、激励するだけ」と笑った。

 創部わずか5年目で、優勝に王手をかけた。現3年生が入学した時に、初めて部員が1~3年そろった。現チーム発足時からの合言葉は「先輩を超えろ」。一昨年のベスト4をついに超えた。畠山は「ここに来て久夫先生と一体となれたのがうれしくて。培ってきたもの、苦しかったことの多さでは、どのチームにも負けない」と胸を張った。

 9リバウンドにルーズボールも再三奪取し、勝利に貢献した村田翔(3年)は「久夫先生に恩返しするには、優勝するしかありません」と語気を強めた。昨年は準々決勝、一昨年は準決勝で敗れている福岡一にリベンジし、頂点の座をものにする。【北村宏平】