<全国高校バスケット選抜優勝大会:北陸68-60福岡第一>◇決勝◇29日◇東京体育館(高校バスケ)

 男子は北陸(福井)が福岡第一(福岡)を下し、33回目の出場で悲願の初優勝を果たした。これまで大会最多となる7回の準優勝と「シルバーコレクター」に甘んじ、今季は高校総体、国体ともに3回戦負けだったが、その後の厳しい練習などで急成長。主将の藤永佳昭(3年)らが持ち前の守備力を発揮し、難敵を退けた。福岡第一は4年連続準優勝となった。

 試合終了の瞬間、藤永がボールを高く投げ上げた。「優勝したらやろうと決めていた。夢でした」。選手全員で輪になり、久井茂稔コーチ(44)を胴上げ。同コーチが現役だった83年決勝で延長の末、能代工(秋田)に1点差負けしてから、計7度のV逸を経験した。「8度目の正直です」と指揮官の声が上ずった。

 21-15で迎えた第2クオーター(Q)、「VTRで研究していたので、相手のパスが分かっていた」と藤永がインターセプトからシュートを決めるプレーを2連発。相手に反撃のスキを与えず、5分足らずで33-15と差を広げた。総体、国体で敗れた後、練習も生活も厳しさを求めた。練習でミスが出ると、ミスした選手以外全員が走る。自分のミスのために40人近い仲間が走らされるのを見ることで、個々に責任感が増したという。食事中の携帯電話使用やシャツのすそ出し、「腰パン」など禁止事項の徹底は、選手が自発的に進めた。

 精神的に波が大きかった199センチエースの野本建吾(3年)も、たくましさを増した。この日、第4Qで右目周りを打撲。「以前の自分なら気持ちで負けていた。今日は打撲に関係なくプレーできた」。視界がぼやける中で走り続けた。

 チームに新たな歴史をつくったが、藤永は「自分たちの力じゃない。支えてくれた人たちのおかげ」と話した。OBから受け継いだ「1対1で守りきる」という伝統が生んだ勝利だった。【岡田美奈】