11年世界選手権銀メダル小塚崇彦氏(28)が、日刊スポーツでフィギュアスケートを解説する。10年バンクーバー五輪も経験した小塚氏が、男子シングルで注目を集めるジャンプについて語った。フリーで4回転を3~5種類で5本組み込むなど、多様な時代に突入し、平昌五輪は4回転ジャンプを含む要素をミスなくこなした選手がトップに立つと予想。6種類のジャンプそれぞれの違いについても語る。

 4回転ジャンプをめぐる状況は急激に変化した。ここ2年で宇野昌磨がフリップ、羽生結弦がループに成功。ネーサン・チェン(米国)と金博洋(中国)はルッツを跳ぶ。4回転半以外の5種類が出そろう現状を、小塚氏は「ほぼほぼ人間の限界に近づいている」と表現する。

 小塚氏 まず羽生選手という4回転のトーループとサルコーをすぱすぱ跳ぶ選手が出た。そこに勝つにはどうするか。ただ同じことをやっても二番煎じで羽生選手には勝てない。皆が新しいジャンプを、と考えたと思う。それに伴って技術点が伸び、演技構成点も伸びた。その傾向をみれば、最初にジャンプで技術点を上げて、あとから後半の点を出す。それがこの採点方式では近道と考えることもできます。

 小塚氏は羽生とともに19歳の金博洋にも注目する。

 小塚氏 彼の功績も大きい。14年9月にジュニアGPシリーズ愛知大会で(当時16歳の)金を見た。4回転のトーループ、サルコーを跳んで、その後にルッツも習得した。ジュニアがあそこまで4回転を跳ぶなら、シニアも負けていられない、やるしかない。4回転の進歩の裏には、そのような気持ちもあっただろう。

 現在の4回転時代は羽生、宇野、チェン、金の4人が軸だ。3種類の羽生に対し、チェンは史上初の5種類を、宇野と金は4種類を実戦に投入。2季前の羽生は1度転倒しても優勝できるほどジャンプの構成=基礎点で大きくリードしていたが、状況は変わった。

 小塚氏 他の選手がフリップ、ルッツを習得したことで、ひとつのミスが命とりになるのではないか。試合当日にミスなくできた人が、上にポンと上がると思った。これまではジャンプの技術面で差があった。そこが追いつけ、追い越せとなって実力が拮抗(きっこう)してきている。

 羽生は今季のフリーで4回転を3種5本組み込むと宣言している。後半には3つの連続ジャンプに4回転トーループを用意。その上で基礎点が高いルッツをプログラムに組み込む準備もしている。羽生、金博洋らが進化させた4回転時代。活発で過酷な平昌五輪シーズンが始まった。(敬称略)【取材・構成=益田一弘】

 ◆小塚崇彦(こづか・たかひこ)1989年(平元)2月27日、愛知・名古屋生まれ。5歳で競技を始める。06年世界ジュニアで日本男子3人目の優勝。10年バンクーバー五輪8位、11年に世界選手権銀メダル。15-16年シーズン限りで現役引退。16年4月から所属先だったトヨタ自動車に入社。今年から雇用形態を変えて、アジア地域へのフィギュア普及活動などに乗り出している。

複数の4回転ジャンプを跳ぶ主な選手
複数の4回転ジャンプを跳ぶ主な選手