リオデジャネイロ・パラリンピックの陸上女子走り幅跳び(T42)で6位入賞した大西瞳は、「義足の伝道師」でもある。司会を務めるNHKの障がい者バラエティー番組「バリバラ」では、短いスカートや短パン姿で登場し、意識的に右太ももから下の義足を露出させる。義足モデルとしても活躍している。

 昨年、彼女にその理由を聞いた。「一般の人が義足を見る機会はほとんどないので、見てもらいたいと思ったんです。特に義足を付けて動いている人を見てもらいたい。今の義足はすごく機能的でかっこいい。私の義足を見て『かっこいい』と言われるとうれしいです」。実際に見せてもらった義足はデザインも洗練され、なるほどしゃれた印象を受けた。

 彼女と話していて、車いすバスケットボールの元選手の話を思い出した。「車いすも眼鏡も障害を補う同じ補助具。なのに眼鏡をかけていても誰も気にしないのに、車いすに乗っていると特別な目で見られる」。眼鏡をかけた人は多いが、車いすに乗った人を目にする機会は少ない。だから「特別な目」になるのだろう。その意味で大西の活動は実に意義があると思った。

 5月の東京都のシンポジウムで、日本障がい者スポーツ協会の高橋秀文常務理事がこんな話をした。「人は見慣れていないと目を背ける。心のバリアフリーを実現するには、お互いの違いを理解し、尊重することが必要。そのために露出と教育が重要なんです」。前回ロンドン大会は280万枚のチケットが完売した。選手のCM起用やメディア出演などの露出戦略の効果が大きかったという。

 20年東京大会まで4年。選手強化やメダルの数に目がいきがちだが、それ以上に重要なことがある。障がい者に対する意識改革だ。義足や車いすが、眼鏡と同じように、みんなが当たり前に思える社会にどこまで近づけるか。それが、東京大会の成功と、その後の共生社会実現への鍵を握っている。【五輪・パラリンピック準備委員 首藤正徳】