リオデジャネイロ・パラリンピックが12日間の熱戦の幕を閉じた。日本の金メダルは史上初のゼロに終わった。もっとも目標の金10個は大甘の皮算用で、冷静に日本の現状を考えると、前回の16を大幅に上回る、計24(銀10、銅14)のメダルを取ったことを、今は評価したい。

 209の世界新記録が示すように、世界はもっと先にいた。ただ約半分の94は中国とウクライナがマークしたもの。国家を挙げて強化に取り組んでいる国である。つい最近まで競技団体の運営費さえ事欠いていた日本と比較しても仕方がない。そもそも五輪をまねてメダル数を目標に掲げる必要があったのか。

 20年東京大会の目標は金22個だそうだ。あと4年。リオ大会を見る限り、世界とは選手個々の努力では埋められない差を感じた。目標達成には強化やサポートの体制を大胆に見直さなければならないだろう。パラの枠を超えて、五輪競技とコーチ人事の協力体制を築くのも一考だ。

 もっとも有力選手の強化以上に環境整備が急務だ。障害や車いすの使用を理由に、利用を断るスポーツ施設も少なくない。前回ロンドン大会をテレビで見て陸上を始め、リオで銀2個を獲得した佐藤友祈(車いす)の例もある。埋もれた才能を発掘するためにも、障がい者が気軽に競技を始められる土壌を、全国に充実させる必要がある。

 リオではパラリンピックの五輪化がより顕著になった。急速に高まる競技力、ドーピングによるロシアの出場禁止。近い将来、限られたスポーツエリートの大会に特化するだろう。リオで大差の予選敗退に「この舞台に立ててよかった」と笑顔を見せた選手たちには手が届かなくなる。中国を否定するつもりはないが、メダルだけを求めるパラリンピックはどこか寂しい。

 20年東京大会は好成績を残すことが成功ではない。ホスト国である。大会を盛り上げるためには、会場を満員に埋めなければならない。それが最高のおもてなしでもある。メダルの数以上に日本の真価が問われる。課題山積。一息ついているひまはない。【五輪・パラリンピック準備委員 首藤正徳】