今回は、スポーツと地域・社会との関わり合いについてお話ししたい。私は千葉県松戸市で生まれ、1歳の時に銚子市へ移住し、高校卒業までその地で育った。

銚子市は私のふるさとだ。

日本の最東端であり、海に囲まれ、漁業・農業が盛んで自然にあふれている。食卓には毎日新鮮な刺し身や煮魚が並び、今思えば大変恵まれた環境で育ったと感謝している。


母校で行った講演会で
母校で行った講演会で

2013年、リオデジャネイロ五輪に向けて私を応援してくださる組織が出来上がった。私自身、その頃は「オリンピックは夢のまた夢」で、正直現実味はなかった。それでも地元の人たちは、1964年東京五輪の山口東一氏(陸上競技)以来となる銚子市出身の日本代表という期待を私にかけてくださった。

リオデジャネイロ五輪出場が決まった際も、たくさんの応援、ご支援をいただいた。正直、こんなにも多くの市民の方々が応援してくれることに驚いたと同時に、私以上に、私のオリンピック出場を喜んでくださる方々の存在に、本当に胸が熱くなった。


地元で開催されたリオデジャネイロ五輪の壮行会
地元で開催されたリオデジャネイロ五輪の壮行会

2018年からは新たに中学・高校時代の同級生が中心となり、後援会を発足してくださった。その後援会には、市民の方々はじめ、銚子市の企業様にもご支援いただき、皆様のおかげで活動が出来ていた。

リオデジャネイロ五輪後から、「アスリートである身として、スポンサーのため、社会のため、地域のために何ができるか」という事をより深く考えるようになった。

年齢も30歳になった頃、「アスリートは夢や目標に向かって突き進み、その成果を出すだけでいいのか?」と改めて考えた。これはもちろん間違っていないしすてきな事だと思う。しかし、トライアスロンというスポーツをやっていて「ただただ練習に没頭するアスリートでは、この先はないのでは?」という考えもあり、「何か私にしか出来ないことはないか」と探し始めた。引退してからはさらにその事に対する追求心が増した。


「銚子アスリートプラン」を立ち上げました
「銚子アスリートプラン」を立ち上げました

アスリートが社会にどう必要とされるか、また、アスリートが社会に対して何ができるかを自問自答し、考えていた時に、銚子電力株式会社から協業依頼をいただいた。

銚子電力株式会社は、銚子の恵みを生かし、エネルギーの地産地消に取り組んでいる会社で、銚子市も参画し、銚子全体を盛り上げる仕組みを考えている。私の考え、発想と合致する部分が大きく、今回銚子電力と協業し「銚子アスリートプラン」という電気プランを立ち上げた。

このプランは、電気料金の一部がアスリートの活動費などに還元されるもので、無理なく普段の生活を送るだけで銚子にゆかりのあるアスリートを応援することができる。今回は、全国で活躍する競泳選手3名に賛同いただき、実現した。

銚子市は全国でも珍しく、小学校で部活動がある自治体だ。春先は陸上、夏は水泳、秋はバスケットボール、冬は駅伝や合唱など、四季によって異なる部活動が形成され、生徒たちは好きな活動を選ぶことができる。その甲斐もあってか、銚子市地域はスポーツで活躍している学生や社会人が多い。

プロ選手でいえば、サッカーでは鈴木優磨選手(ベルギー、シントトロイデン)、野球では榊原翼選手(オリックス)が現役選手として活躍している。また、陸上、競泳、トライアスロン、自転車競技でも活躍している選手が多くいる。

その半面、残念ではあるが少子化が進んでおり、廃校になる学校も増えてきた。私の母校である銚子西高も廃校となった。しかしその廃校を再生し、スポーツ施設としてよみがえらせたり、市民の触れ合いの場として活用したりと銚子市を盛り上げてくれている方々もたくさんいるのだ。

私もアスリートが社会に貢献できる可能性を、追求していきたいと思っている。それはスポーツの枠組みでなくても構わない。地域という結びつきの中で、アスリートが協力し合いながら地域・社会に貢献出来る仕組みを作ることが、今の目標だ。もちろん、ふるさと銚子市の特性を生かした事業のさらなる展開も考えていきたい。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)