先日、SNSでも報告させてもらったが、このたび、第2子を授かることができた。すでに妊娠後期に入っており、来月に出産を控えている。

今回は、第2子を妊娠し、私が経験してきた妊娠中のマイナートラブルについて話そうと思う。

長女を出産してから、もうすぐ4年。

出産時のつらさや痛みは、「かわいいわが子の顔を見れば忘れる」と聞いていたが、全くそんな事はなかった。つわりから始まり、妊娠期間、そして陣痛から出産、産後の身体の痛みは今でも覚えているし、2人目を考える時にも脳裏をよぎった。


子供を授かることは「奇跡の連続」だ。ネット社会の今では、妊娠し出産できることが「当たり前のことではない」ということを容易に知ることができる。

そのため、自然に妊娠できることだけでも幸せなこと。しかし、妊娠した直後から女性の身体は大きく変化。おなかの中で命を育むことは、幸せなことばかりではないことを、身をもって経験した。「奇跡の連続」には「代償」も伴うのだ。

以下のことが、私が経験した妊娠から出産までの「代償」である。

・つわり(3カ月間、気持ち悪さや吐き気との戦いが24時間続く)

・どれだけ寝ても眠い

・行動制限

・食べられるものが限られる

・今まで食べられたものが食べられない

・偏食になる

・今まであまり食べなかった物が食べたくなる(揚げ物など高カロリーのもの)

・水分を受け付けない

・口内の不快感

・腰痛、恥骨痛

・おなかの圧迫で便秘や吐き気

・体重の増加

・医師の理想を実現できないストレス

・頻尿になり、夜中に何度も起きる

・くしゃみなどの軽い衝撃での尿漏れ

・胎動で内臓や肋骨(ろっこつ)を蹴られ痛みを伴う

・胎動で気持ち悪くなる

・激しい胎動で眠れない

・夜中に目が覚めたときの空腹との戦い

・貧血や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病に気をつける生活

・いま何かあったらという不安感

・急に襲ってくるこむら返り

・寝返りがつらい

・後期づわり(吐き気、圧迫、息切れ、疲れやすい)

・社会からの孤立感


さらに、2人目以降については、

・仕事や家事、そして育児を投げ出す事はできない

・イライラ

・おなかの張り

・赤ちゃん返りする上の子のケア

・成長する上の子の遊びにも付き合ってあげたい気持ちで無理をしてしまう

・上の子に我慢をさせる罪悪感

・ワンオペの時に何かあったらという不安感

・仕事への不安

などだ。ぱっと思いつくだけでもこれだけある。

そして今回の妊娠については、コロナ禍ということも大きな不安要素の1つだった。重症化してしまった場合や、ワクチン接種の安全性など、確かな情報が何なのか分からない状況がとても怖かった。

妊娠から出産までの過程は人それぞれ。もっと重い症状の人がいれば、軽い症状の人もいる。いつかは終わりがくるとはいえ、約1年もの間、女性はこういった症状と戦っているのだ。そして、無事出産を終えても、産後のトラブルが待っている可能性もある。

私が潮田玲子さんたちと活動している「Woman's ways」では、女性の身体について深く知ることを目的としている。活躍中のアスリートでも、人生を歩む中に、将来、妊娠や出産を望む人は多くいるだろう。しかし、アスリートとして過ごす間に、妊娠や出産のことを考えて自分の身体をいたわりながら過ごす選手はどれくらいいるだろうか。過酷な練習や体形作りで無理をし、将来後悔することがないような知識を学んでおくことは大切な事だと思う。

そして、共に人生を歩んでいく男性にも、妊娠から出産とともに大きく変化する「女性の心身」や「女性特有のトラブルや悩み」を理解し、共有してほしいと願う。女性が生きていく中で、とても心強い支えになると考えているからだ。

「奇跡の連続」の代償となるトラブルは、トラウマになるほどつらいこともある。その時に、パートナーがどのように接してくれるかによっても、身体的にも精神的にも大きく救われることが多々あるのだ。

現役時代、いつか家庭を持って子育てをすることも1つの目標だった。幸せな未来を想像することが「今」を頑張る原動力にもなっていた。しかし、実際に経験してみないと分からないことはたくさんあった。

「想像した未来」をかなえた今では、改めて母の偉大さを感じている。私が注いでいるわが子への愛情は、自分が受けてきたものでもあるからだ。

上の子はまだ3歳。ひとり立ち出来るように、あと何十年もサポートしていかなければいけない。その責任は、喜びでもあり彼女の人生を左右するとても重大なものだと重く感じることもある。

時代と共に変わりゆく世の中で、強く生き抜いて行けるよう、親として何をしてあげられるのか。生まれてからも常に悩みは尽きないが、今までもそうだったように「経験してみないと分からないこと」の1つだと、未来を楽しむ感覚を持ち「今」のベストを尽くしていこうと思う。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)