箱根駅伝は青学大の3連覇&3冠で幕を閉じた。

 出雲と全日本はそれぞれ2、3位と力は上位だった山梨学院は17位。序盤で流れを失った。箱根駅伝では奮わず、残念ながら紙面ではお蔵入りとなってしまったが、上田誠仁監督(58)がチームをまとめるために実施したミーティングの一部を紹介したい。

 夏合宿のミーティングルーム。上田監督が選手を集めた。目標に掲げた3大駅伝制覇には何が必要か-。まるで福山雅治が主演するドラマ「ガリレオ」ごとくチョークで黒板に記し始め、「勝利の方程式」を説いた。

 山梨学院大の部員は100人超。ケニア人留学生ニャイロ(2年)、上田監督の次男・健太(3年)ら全国高校駅伝を制した付属高出身者や推薦入学者、それに一般入部者も40人以上いる。大所帯かつ多様な背景を持った人がいた。だからこそ一体感が何より必要だった。

 まずチームのあるべき姿を「球体」に例えた。球体=チームの中核(コア)をなすのは、「<1>組織=人」「<2>業務=練習、仕事」「<3>目標」とした。それぞれがバランスを保った形のきれいな球体は、まっすぐ進む。成果=優勝へ方向性も定まり、勢いよく転がっていく。優勝へ続く道のり。けがや病気などの落とし穴、障害も当然ある。そんな障害も、スピードのある球体なら乗り越えられる。

 しかし<1>~<3>のいずれかが欠ければ、球体はへこむ。いずれかが乱れれば、球体は突起も現れる。丸みを失った球体はまっすぐ進ない。勢いもない。そうしたら、障害を乗り越えられず、止まってしまう。1度回転が止まった球体を、もう一度動かすことは難しい。「3大駅伝制覇はできない」と熱弁した。

 いくら準備をしても、勝負の女神は気まぐれだ。大会の約1週間前に主力の3人がインフルエンザを発症。さらにニャイロも故障で本調子でなく、上位争いに絡むことなく終わり、3年ぶりにシード落ちとなった。

 駅伝には個人と団体競技の両面を持つ。それでいての一発勝負。だからこそ、すべてが順調に回ることは難しい。あらためて、そう痛感させられた箱根駅伝だった。【上田悠太】

 ◆上田悠太(うえだ・ゆうた)1989年(平成元年)7月17日、千葉県市川市生まれ。明大を卒業後、14年に入社。芸能やサッカーを担当した後、陸上、空手など五輪競技を取材。

上田監督が黒板に記した「勝利の方程式」。チームのあるべき姿を「球体」に例えた。
上田監督が黒板に記した「勝利の方程式」。チームのあるべき姿を「球体」に例えた。