これは4年後の光景かもしれない。

 10日まで行われたフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナル。ジュニア女子シングルに強い興味を覚えた。出場した6人中5人がロシア勢。日本の紀平梨花(15=関大KFSC)が、孤軍奮闘する展開だった。

 紀平は、フリーの冒頭で女子初の3回転半(トリプルアクセル)-3回転トーループを決めた。その基礎点は12・8点。4回転フリップ(12・3点)と4回転ルッツ(13・6点)の間に入るほどの得点だ。

 しかも出来栄えは1・86点だった。トリプルアクセルが代名詞だった浅田真央さんが同ジャンプで記録した最高の出来栄え点と同じだった。この連続ジャンプだけで、14・66点という衝撃的な得点。男子に例えれば、ネーサン・チェン(米国)や金博洋(中国)が繰り出す必殺の4回転ルッツ-3回転トーループと同等の破壊力といっていい。女子で最高難度、最高得点の輝きを放つ、世界で紀平だけが持つ技術だ。

 一方で、初優勝した13歳のアレクサンドラ・トルソワ(ロシア)も衝撃的なジャンプにトライした。フリー冒頭で4回転サルコー。女子では安藤美姫さんしか成功していない。この日のジャンプは回転不足で、転倒もした。13歳は「優勝できてよかったけど、4回転サルコーが跳べなくてちょっと残念」と悔しがったが、近い将来の完成を予感させるものだった。

 ジュニア女子では出来栄え点を得るために、手を上げるジャンプを連発している。シニアの世界女王ベドベージェワ(ロシア)が得意とすることもあって、一気に広まった感じがある。ただ正直、少し食傷気味だ。それだけに、紀平の3回転半-3回転トーループと、トルソワの4回転サルコーにワクワク感がある。羽生結弦と金博洋が男子4回転時代を加速させたように、この2人が女子の新時代を切り開くかもしれない。

 2人は年齢制限のために平昌五輪には出場できないが、その戦いは続いていくだろう。2022年北京五輪では、どんな対決になっているだろうか。少し気が早いかもしれないが、とても楽しみだ。【益田一弘】