平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)が開幕した。大会第4日の12日には、モーグル男子で原大智(20=日大)が銅メダルを獲得し、今大会日本メダル第1号。続いて、スピードスケート女子1500メートルで高木美帆(23=日体大助手)が銀、ジャンプ女子で高梨沙羅(21=クラレ)が銅と、メダルラッシュにわいた。

 ただ、スポーツの面白さや楽しみは、メダルだけではない。それを、あらためてスノーボードのテレビ解説で認識した。中井孝治さん(33=元ハーフパイプ日本代表)が話す「かっこいい」、「おしゃれ」、「スタイリッシュ」という言葉は、以前の老害スポーツ界なら「不謹慎」と言われただろう。しかし、弊社の「梅ちゃんねる」でも書かれていたが、はまる人が続出だ。

 メダルを争うより、どれだけ自分がかっこよく演じるか。プレーが終わった瞬間に、「どう、かっこよかっただろう!」と胸を張る。失敗すれば、何度でも挑戦し、「いやー、今日はかっこわるかったな」とがっかり。これこそ、スポーツそのものが、メダルより「かっこいい」ことの証しなのではないだろうか。

 その点で、大会前に徹底的に「かっこわるい」ことがあった。アイスホッケー女子の北朝鮮と韓国の合同チームだ。日本の元五輪選手が「政治がスポーツに介入してほしくない。選手がかわいそう」と言っていた。そこまで青臭いことや感情論を振り回すつもりはない。五輪がここまで肥大した以上、国や政治が介入しない五輪などあり得ない。もともと国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪招致の都市に、国の債務保証を求めているぐらいだから、政治や国の干渉を避けることなどできない。スポーツ界が金だけもらって、口を出すなというのは虫が良すぎる。

 しかし、北朝鮮と韓国の合同チームは、政治がスポーツに介入したのではなく、スポーツが政治に介入したのだ。IOCは、自分たちの名を五輪史に残すために、アイスホッケー女子のチームを政治に売り払った。スポーツが政治を利用したのである。「平和」という2文字を利用し、スポーツからすり寄ったのだ。そこにはスポーツへの愛情などどこにもなく、まさに「かっこわるい」老害の典型だった。【吉松忠弘】


 ◆吉松忠弘(よしまつ・ただひろ) スキージャーナル社を経て87年に日刊スポーツ新聞社に。五輪競技としてテニス、体操、卓球、フィギュアスケートなどを担当。現在は、錦織圭番として、老骨にむち打ち駆け回る日々。