<自転車:ツール・ド・フランス>◇第19S◇53・5キロ◇ボヌバル~シャルトル◇21日

 個人タイムトライアルが行われ、マイヨジョーヌ(総合1位)のブラッドリー・ウィギンス(英国=チームスカイ)が1時間4分13秒のタイムで優勝した。第9Sの個人タイムトライアルに続いて今大会2勝目をマーク、総合優勝を事実上決定させた。グランツール初優勝を飾るとともに、ツール99回目にして初めて、英国人が総合優勝を果たした。

 ウィギンスの完勝だった。14キロの第1計測地点を16分49秒と、ただ一人16分台をたたき出すと、30・5キロの第2計測地点では36分41秒で通過。この時点で2位に54秒差をつけた。ゴールでは2位クリス・フルーム(27、英国=チームスカイ)との差を1分16秒まで広げ、ガッツポーズでゴールに飛び込んだ。圧倒的な強さで、自らの総合優勝を引き寄せた。

 ウィギンスは、第7Sのプランシェ・デ・ベルフィーユの山頂ゴールで奪取したマイヨジョーヌを安定したレースぶりで最後まで譲らなかった。第9Sの個人タイムトライアルでリードを広げると、中盤から終盤にかけての山岳ステージでも、昨年の覇者カデル・エバンス(35、オーストラリア=BMCレーシング)ビンチェンツォ・ニバリ(27、イタリア=リクイガス・キャノンデール)らライバル相手にタイムを失わなかった。ピレネーの上りでエバンス、ニバリが脱落していく中で、着実に差を広げ続けた。第13Sでは残り1キロで、アシストに回り先頭を引くなど、余裕すら感じさせる戦いぶりだった。

 優勝に大きく貢献したのは、総合2位のフルームだった。山岳では常にウィギンスの前で強力に引っ張った。第7Sではゴール前で仕掛けステージ優勝。第11Sでは、ウィギンスを一時置き去りにしてしまうなど、「総合優勝を狙っているのではないか?」という疑いも持たれた。しかし「今回の目標ではない」と否定し、最後までチームのエースへの忠誠を失わなかった。この日の個人TTでも2位に入り、ウィギンスも「ツールを勝てる選手」と認めた実力者。ウィギンスは最強のアシストに導かれ頂点をきわめた。

 ウィギンスは表彰台で、大きく息を吐き目を潤ませた。インタビューでは「目標を達成できた。ファンタスティックだ。勝つためにすごく準備してきた。(今日の)スタートの瞬間は、非常に重い緊張の瞬間だった。(優勝を確信した)残り20キロは、自分が積み重ねた人生のステージを思い起こしていた」と神妙な表情で喜びを語った。大会は22日に最終戦が行われ、シャンゼリゼでゴールを迎える。