いよいよ全米オープンが始まります。全米オープンはコースだけでなく、ホスピタリティーも最高です。選手全員に無料で高級車レクサスが貸し出されるし、キャディー専用のマッサージやカイロプラクティスの施設もあります。そんな大会はここだけ、まさに世界一の大会です。

 今回の会場チェンバーズ・ベイは、とても面白いコース。リンクスで地面が硬く、フェスキュー芝とまるで全英オープン。それでアップダウンもある。コブや傾斜がきつく、グリーンを外すと50ヤード、60ヤードと転がり落ちてしまうこともあります。

 07年開場と新しく、米ツアーが開催されるのも初めて。過去のデータがないコースでは、キャディーとして情報収集も大事な仕事です。今回はマスターズに勝ったジョーダン・スピースのキャディーであるマイケル・グレラーさんが地元出身なので、先週メールを送ったところ、いろいろアドバイスをいただきました。グレラーさんは元教員で、米ツアーのキャディーとして僕と“同期”で、普段から仲良くさせてもらってます。具体的な助言もあったけど、特に印象的だったのは「このコースはイマジネーションが大事」ということ。創造力を働かせるには、コースについて覚えなきゃいけないことがたくさんあるということです。

 鍵の1つはボールの落としどころです。飛び過ぎるとバンカーに入るところも多く、球の転がりを計算しないといけない。主催のUSGA(米国ゴルフ協会)の例年のコンセプト通り、通算イーブンパーで優勝というコース設定です。いくつバーディーを取るかではなく、いかにボギーを打たないようにするかという戦いでしょう。

 このコースに対して、英樹の強みとしてドライバーの精度や小技も生きてきますが、何よりコースマネジメントと忍耐力が発揮されると思います。英樹のマネジメント力はアマ時代から群を抜いており、初めて彼のバッグを担いだ12年アジアアマの時、その素晴らしさに驚きました。その能力があったからこそ13年賞金王にもなれたし、今ここで戦っていられるのです。

 ふだんの米ツアーは、よりエキサイティングな試合をという設定で、優勝スコアも通算18アンダーとかになります。そんな中での英樹はアグレッシブですが、もともとはしぶといゴルフが得意です。しっかりと気持ちを切り替えて、いいゴルフをお見せできるはずです。僕も精いっぱい英樹をサポートし、一緒に戦います。(2015年6月18日付紙面掲載)