2年ぶりに出場した全米オープンで予選落ちした。全英オープンには出られんかった。来季の米ツアーシードかて危ない。ここ2、3年で存在感も薄れた。もう「日本ツアー史上最年少優勝者」でも「和合で58を出した男」でもない。1人の米ツアーメンバー。それ以上でも以下でもない。

 石川遼。彼が今、何を考えてるんか? 全米オープンで予選落ちが決まった第2ラウンド終了後「これだけは…」と思って、聞きました。

 「石川さん、今後も1人でやっていくんですか? コーチとか、つけんのですか?」

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 師匠は父勝美さん。日本で戦ってたときは、毎試合のようにスイングをチェックしてもろとった。でも、米ツアー参戦後は違う。1人になった。年齢的にも“親離れ”という意味ではええタイミングやったかもしれん。ただ、ゴルフに関してはどやろか? 別にコーチでなくてええ。客観的に自分を見てくれる「目」を近くに置いた方が、何かとええんやないんか? そう思って聞いたんですが…答えはノーでした。

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 「大事なのは、信念を持ち続けることでしょう。やるべきことはわかっているんだから、自分でしっかりやっていけばいい」

 さて、ここからは彼の「スイング論」です。

 「常にスイングを変えていくことで成長した選手は、タイガーだけじゃないですか? その人に一番合ったスイングというのは、幼い頃に覚えて、積み上げてきたものと思うんです。例えば、ミケルソンとか、そうと思う。仮に、ほんの5年ぐらいうまくいかなかったからといって、30年のゴルフ人生を支えたスイングを捨てて、新しいものを作っていくというのは、違うんじゃないかなと」

 3年前、やんごとなき事情で、そのオリジナルのスイングを変えたらしい。

 「腰を痛めたことで、負担をかけないようにと。体を動かさない、体重移動を抑えたスイングに改造してきました。でも、結果的に、特にドライバーが振れなくなってしまった。今は『遠回りしたな』と感じます。僕に一番合っているスイングは5、6年前のもの。アマチュア時代から、体になじんできたものに、もう1度作り直さないとダメだと思っています」

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 石川君を見たのは、13年8月の全米プロとウィンダム選手権以来やった。私程度の眼力では、スイングの相違は感じとれんかったけど、パットのフォームは「ありゃ?」と思うほど変わってた。見た目ではっきりわかるのは、スタンスの変化。以前は肩幅程度、両足を開いていたのに、今ではほとんど両足をそろえて打ってる。どっちがええんかなんて、プロやないからよう言いません。ただ「何かどっしり感がなくなったような…」と。パットに型なし、と言うけど、パットの練習が一番、腰に来るという話もよく聞く。腰を痛めたことが、パットにも影響を与えていたんかもしれませんな。

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 全米オープン開幕の2日前、彼はこう言いました。

 「これからが第2のゴルフ人生と思ってます」

 変わらず1人でやっていくのは、ある意味「美学」なんでしょう。それが「石川遼」なんでしょう。みなさん、復活を信じて待ちましょう。期待を裏切らない。それが「石川遼」ですから。【加藤裕一】