女子ツアーから遅れること6週間、4月14日に男子ツアーの国内開幕戦・東建ホームメイトカップが始まる。正直、「やっと始まる」という印象の選手やファンは多いだろう。

 近年の日本男子ツアーの低迷は、試合数に象徴されてきた。今年は現時点で1月末からの海外2連戦を含めて26試合(つまり日本ツアーそのものは既に開幕している)。女子ツアーはほぼ飽和状態の38試合、男子ツアーの歴代最多は83年の46試合だった。この10年間に石川遼、松山英樹という、まさに“天からの贈り物”といえるスター2人が登場しても一過性の“お祭り状態”に甘んじ、ツアーの基盤を強くできなかったのは日本ゴルフツアー機構(JGTO)の怠慢と映っても仕方ない。


 今年3月、そのJGTOの新会長に「世界のアオキ」こと青木功(73)が就任した。これまでも青木を推す声はあったが、青木はプレーでゴルフ界を引っ張る気持ちが大きかった。それを「一肌脱がざるを得ない」というところまで追い込んだ形だ。本人は「ゴルフ界への恩返し」という気持ちと聞く。

 青木には絶大なネームバリューがある。トーナメントに付きもののプロアマ戦に出れば、スポンサー関係者は大喜びだ。さらに日本プロゴルフ協会(PGA)、日本ゴルフ協会(JGA)にも顔が利く。PGAはシニアツアーやレッスンなどを主軸とし、JGAはアマ競技やゴルフの普及を担う。それぞれ独自の道を歩んできたが、ゴルフ人口の減少が深刻な中、共存共栄のため手を組む時なのだ。他の関係団体を含め、ゴルフ業界全体の底上げのため、青木の求心力が求められた。

 実際、青木は会長職の激務により、シニアツアーへの参戦は限られる。これについてPGAの倉本昌弘会長(60)は「非常に大きな痛手。でも、それで男子ツアーが元気になってくれれば」と理解を示す。JGAの山中博史専務理事(52)は「青木さんの顔に泥は塗れない」。山中氏は20年以上も前のダンロップスポーツエンタープライズ勤務時代に青木の海外遠征に帯同するなど、深い絆を持つ協力者の1人だ。ほかにも業界内には「青木さんに頼まれたら嫌とは言えない」人は多いはずだ。


 一方で、現在の女子ツアーの隆盛は小林浩美会長や樋口久子前会長の尽力に加え、20年近くの地道な基盤づくりの上にある。一朝一夕にできたものではないから、多少のことにはびくともしない。男子ツアーの立て直しも、青木の名に頼り切りでは根本は変わらないだろう。


 就任1週間後に心境を尋ねられた時は「まだ、ピンとこないな」と漏らした。約3週後には「まだ動いていないから」と言った。これまでプレー一筋だった青木は、経営や営業のプロではない。ブレーンや裏方がしっかり支えなければ、青木会長の名の輝きは損なわれる。青木を担ぎ出したのであれば、選手も含めて“みこしの担ぎ手”が一丸となって、踏ん張らねばならないと思う。【岡田美奈】