ゴールデンウイークの茨城GCには花粉も、黄砂も、PM2・5もぶっ飛ぶような「セクシークイーン」旋風が吹き荒れた。

 日本ツアーのデビュー戦となった韓国美女ゴルファーのアン・シネ(26)は連日、モデル顔負けのスタイルとヒザ上30センチの超ミニスカというウエアでラウンド。プレー中のルーティンの1つなのだろう。ミニスカを左手でほんの少し上げるしぐさもセクシー。ニックネームに違わぬオーラを発した4日間だった。

 優勝争いに加わらなかったこともあるだろう。報道陣からの質問はプレー内容よりもウエアやファッションのことが多くなりがちだったが、嫌な顔は1度もしなかった。まず「日本でセクシークイーンと呼ばれるのは好きか?」という質問に「はい、好きですし、いいと思います」とスマイル。その直後にギャラリーから「セクシークイーン!」との声が飛ぶと「はーい」とニッコリ反応。そのシーンを通じ、本人もお墨付きの愛称だと分かった。

 美女と呼ばれ、嫌な気持ちになる女性アスリートは少ないだろう。しかしながら競技以外の質問が多いことへの抵抗感はあるのではないか-と想像していたが、アン・シネは「全然、気分は悪くないんです。逆に(ファッションやスタイルに)注目していただけて感謝しています」と屈託ない。ゴルフと同じボルテージで美しさも追求している意図も伝わってきた。

 プロゴルファーとしての成功を考えれば考えるほど、美は少なからず「邪魔」になるはずだ。両腕や下半身を鍛え抜き、飛距離アップを目指せば、逆に今の体型やスタイルをキープするのは難しくなる。プロスポーツは勝負の世界。優勝を目指す上ではストレスも大きくなる。アン・シネの言動を見ている限り、練習や大会などゴルフで味わう苦しみは美への追求で浄化しているように感じる。スタイルやファッションにこだわることで心身のバランスを取ることが、結果的にプロとしての華やかさにつながっていると見る。そんな側面もアン・シネの存在感を際立たせている。

 韓国ツアーで3勝し、数年前に日本ツアーに参戦する意欲もあったという。ところが母が重病になったため、断念した経緯があるそうだ。その母からは「笑顔を絶やさないように。自分に心を寄せてくれる人には心で返しなさい」と教えられてきたという。大会期間中は毎日40~50分間、ギャラリーとの即席サイン会に応じた。アン・シネは「NEVER TOO LATE(遅すぎることはない)。逆に今のタイミングが良かったのかなと思います」と、想像以上の注目ぶりを歓迎していた。

 次戦は12日開幕のほけんの窓口レディース(福岡CC和白C)になる。「来日する前にアイアンの感触が合わずに飛行機に乗る直前で替えてきました。適応する時間がなかったので、次の試合前までにショット感覚を取り戻したい」。福岡ではファッションやスタイルとともに、実力でも「セクシークイーン」旋風が巻き起こるような予感がする。【藤中栄二】

 ◆藤中栄二(ふじなか・えいじ)1970年(昭45)9月3日、長野・上田市生まれ。上田高-中大卒。93年入社。写真部-静岡支局-スポーツ部-静岡支局-東京五輪パラリンピック・スポーツ部。17年4月からゴルフ担当。