あなたのこだわりは何ですか? え~っと、私はですねぇ。缶ビールを飲む際に、必ずコップに移すことでしょうか。やっぱりビールは泡が大事。缶のまま口を付けて飲むのと、コップに注いで上唇に泡を付けながらグビリいくのとでは、おいしさが違います。出張帰りに新幹線で一杯やる時にだって、わざわざ紙コップを買いに走るくらいですから。

 最近は仕事終わりのビールが、何よりも楽しみでして。でも、まあ、そんなオッサンのビール論を語りたくて、このコラムを書いているわけではありません。ちょっと長くなりましたね。すいません。

 そんなこんなで、5月12日~14日まで福岡CC和白Cで開催された女子ゴルフツアー・ほけんの窓口レディース。ツアー4勝目を挙げた鈴木愛(23=セールスフォース)にも、意外なこだわりがあったのです。鈴木は古傷の左膝痛をかばうあまり、右膝にも疲労がたまり、一時は棄権も考えたのだという。試合後の優勝会見。喜びと安堵(あんど)が入り交じったような表情を浮かべながら、こんな話を聞かせてくれた。

 「ここまで体力的にキツかった3日間は、これまでなかったです。でも、プレー中は何か面白いことを見つけて、笑うようにしていました。笑顔の方が見栄えがいいじゃないですか。それに怒っている時よりも、笑顔の時の方が、いい気持ちになれる。だから、今回だけでなく、いつも笑っているようにしています」。

 そんな“愛ちゃんスマイル”を陰で支えているのが、母美江さん(46)だった。ゴルフは試合時間が長い。空腹になれば集中力がなくなる。プレーの合間に食べるものを気遣い、最近は炊飯器と米を抱えて一緒にツアーを転戦している。真夜中に米を炊き、おにぎりを握る。そこに、鈴木のこだわりがあった。母の愛情がたっぷり入ったおにぎりには、のりが巻いていないのだ。その理由を、美江さんが教えてくれた。

 「以前、歯にのりが付いてしまったことがあるみたいなんです。試合中に食べるものですからね。歯に付いたら、笑った時に目立ってしまうでしょう。だから、のりは巻かないようにしています」

 ゴルフは好不調の波が、そのままスコアに出る繊細な競技だと思う。誰だってイライラする時もあれば、気持ちが沈んでいる日もある。だが、できる限り感情をコントロールすることで、鈴木は結果につなげようとしている。

 “愛ちゃんスマイル”を支える母のお手製おにぎり。どんな苦境にもめげない笑顔が、今季初の優勝につながった。【益子浩一】