終わりない夢がある。

 「娘にね、『やりたいことをやれ』と言うたんです。そうしたら『ゴルフをやる』と言うからね。一緒に練習しているんですわ」

 プロ野球近鉄などで活躍した中村紀洋(45)はそう明かすと、うれしそうにクラブを振るしぐさをした。

 8月1日から2日間、兵庫・ABCゴルフ倶楽部(7003ヤード、パー72)で行われた日刊アマゴルフの全日本シングルプレーヤーズ選手権・関西大会決勝(本社主催)。18位で10月の全日本大会(北海道・ザ・ノースカントリーGC)の出場権を獲得した中村には、枯れることのない野望があった。

 「いずれね、そうなってくれたら、ええんやけどね。(女子ゴルフで)20歳はいわゆる黄金世代でしょ。いい環境があるんやからね」

 98年生まれの次女絵里香さん(20)が、プロゴルファーへの道を歩み始めた。高校まではバレーボール部。本格的にゴルフを始めたのは、ここ数年だが「上達が早いんですわ。そこそこのスコアで回ってくる」という。中村自身も昨年、ツアー出場の第1関門となる1次予選会(クオリファイイングトーナメント=QT)に出場。今年はプロ野球OBらで戦った「ドリームマッチ」と日程が重なったため、再挑戦は見送ったが、来年以降にまたQTに出場する意向がある。プロ野球巨人の原辰徳前監督(60)が、シニアツアーに参戦したことにも刺激を受けた。

 「原さんが頑張っているんやから。俺もね、そういう可能性があるのであれば、やりたいですよね」

 45歳になった今でも“生涯現役”を貫き、何ごとにも全力投球する。ちょうど1年前、QTを取材した時には、こんなことを漏らしていた。

 「人生はそう長くはない。後悔だけはせんようにね。体が元気なうちに、チャレンジしたいんですわ」

 中村の夢に、プロテスト合格を目指して歩み出した愛娘も加わった。二人三脚で追い求める新たな道。父と娘が、ともにツアー出場を果たす日が、訪れるかも知れない。【益子浩一】

ティーショットを放つ中村紀洋(2018年8月2日撮影)
ティーショットを放つ中村紀洋(2018年8月2日撮影)