日本女子アマチュアゴルフ選手権(茨城・大洗GC)での勝みなみ(15=鹿児島高1年)の結果が気になって仕方なかった。勝の祖父市来龍作さん(74)のような心境だったかもしれない(私にとっては子供と孫の間くらいの存在かな)。残念ながら、準々決勝で敗退して女子アマ日本一には手が届かなかった。「まあ、チャンスは来年も再来年もあるから」。もし、取材現場にいたなら落胆する勝にこう言って慰めていただろう。

 もう還暦を迎えた「おっさんゴルフ記者」を、勝みなみはキュンキュンさせる魅力がある。4月に女子ツアーで最年少優勝した15歳のアマチュアを、6月中旬に行われたサントリー・レディース(兵庫・六甲国際GC)で初めて取材した。成績は4日間でイーブンパーの24位。ローアマチュアにもなれなかったが、第2日に66を出すなど十分に魅力的なゴルフを見せてくれた。

 スタートホール。ティーアップして、2回ブンブンと素振りをする。最後に左打ちの素振りを1回。そして、ボールの後方に立ち帽子をとって、コースに「お願いします」と一礼してからプレーに入る。この姿が初々しくて、またキュンするのである。勝のゴルフの師である祖父龍作さん、母久美さん(47)とも話をした。素朴な人柄で「この祖父、この母にしてこの子あり」だと思った。

 龍作さんは「高校は絶対卒業させます。ゴルフだけうまい子にはしたくないですから。人間的にも立派にならないとだめでしょう」と言っておられた。家族にこの考え方があるのなら大丈夫だ。

 質問にも、聞く方の目を見てはきはきと答える。スコアがいい時も悪い時も笑顔を絶やさない。尊敬するゴルファーは宮里藍だが、その藍ちゃんをほうふつとさせる。これから2年間のアマチュアを経てプロになるだろうが、ずっとこのままの心でいてほしいなあ、と思う。

 少しゴルフの話をしたい。勝のグリップは珍しいベースボールグリップだ。手が小さいジュニアから始めるプレーヤーのグリップは、右手の小指と左手の人さし指を絡めて握るインターロッキングが多い。両手の一体感が出るからで、松山英樹もタイガー・ウッズもそうだ。右手の小指を左手の人さし指と中指の間に乗せるオーバーラッピングがオーソドックスと言われているが、主流はインターロッキングになってきているような気がする。

 「みなみちゃんのグリップは右手が強くなってくると、フックが出てきますよね」。こんなグリップ談義を龍作さんとしていた。龍作さんも、それを懸念していたらしいが「ずっとあのグリップでいくみたいじゃ。みなみは右手の“殺し方”を知っているから」と言う。珍しいベースボールグリップのプロゴルファーが誕生することになるだろう。

 次にドライバーショット。勝はややオープンスタンスにして構え、高いティーアップしたボールを、インサイドアウトの軌道で打っていく。最も飛距離の出るハイドローの弾道だ。またこのスイング談義になって、龍作さんは「そうじゃ」とうなずいてくれたけれど、当の勝は「わかりません」とニコリとするだけ。母久美さんが「この子は感性でやってますから」と助け舟を出す。このやりとりがまたほほえましくて、おっさん記者はまたまたキュンとしてしまうのである。

 今度はいつ取材できるのであろうか。ゴルファー・勝みなみ。まっすぐに成長してくれることを祈っている。【町野直人】