9月21日終了のANAオープンは42歳の宮本勝昌が勝った。同28日終了のアジアパシフィックオープン・ダイヤモンド杯ではなんと45歳の藤田寛之が今季3勝目を挙げる活躍を見せた。10月5日終了のトップ杯東海クラシックは、28歳韓国のS・H・キムの日本ツアー参戦2年目の初勝利だったが、この大会でも40代の選手が頑張っていた。

 1人は増田伸洋、41歳だ。増田ははっきりと「宮本さんや藤田さんら40代の人が頑張っておられるので、ボクもその流れに乗りたい」と言っていた。06年のマンダムルシードよみうりオープンで初優勝を飾った。流通経大付柏高(千葉)時代は高校日本代表候補までいったラガーマン。

 異色の飛ばし屋は大きく飛躍するかと思われたが、そこから勝利はない。それどころか、12年(約804万円、ランク88位)、13年(約87万2000円、ランク191位)とシード権を逃した。とくに昨年の低迷はひどく「別に故障したわけではなく、心の問題が大きいかも」と振り返った。

 「若い時はここまで飛んでいたのに、だめだ」と思い詰めてしまう。例年、同じ開催コースでプレーするとそんなことを思ってしまう。我々が「昔は飛んだのになあ」と悔しがるのと同じ心境がプロにもあるのだろう。「それで、さらに高みを求めてスイングを崩した」のが不振の原因だった。しかし、今季は「いま自分が出来ることをやろう」と考え方を変えた。

 そんな心構えが功を奏して、この大会でも12位に入り約200万円の賞金を積み重ね、約1646万円の現在ランク34位になり、ほぼ3年ぶりのシード権奪回を決めた。そんな増田に私がシード選手になって当然と思ったプレーが第3日にあった。

 ツアー屈指の難ホールと言われている16番パー3でトリプルボギーの「6」を打った直後の17番パー4だった。プロゴルファーが優勝争いしていて、一気に3打失うのは致命的だ。我々なら、もはやなえてしまって、そこからダボ、ボギーと続いてしまう打撃だ。しかし、増田は決して次のやさしくない17番で第2打を4メートルにつけてバーディーを奪ったのだ。「折れている暇はない。バーディーを取ってやる気持ちでした」。トリのあとバーディー-。こんなところに私はプロゴルファーの「すごみ」を見る思いだった。

 もう1人、43歳の細川和彦も頑張っている。通算4アンダーで5位に入り約400万円を稼いだ。それでもまだ約744万円でランク70位と、来季から賞金ランク60位までが、シード選手と規定が変わったため、あと900万円ほど稼がなくてはいけない。「あの過酷な最終予選会に出るのはいやなので、絶対頑張る」。昨年失ったシード権を奪い返す意気込みはハンパでない。

 ところでこの大会が行われた愛知・三好CC西コースは、ツアー屈指の難コースだ。昨年優勝の片山晋呉、今年のS・H・キムの優勝スコアがともに2桁アンダーいかない通算7アンダーだったことでも、それがわかる。そのコース(パー72)で細川は第1日から71、70、72、71と1度もオーバーパーを打たなかった。そのあたりの事を指摘すると、細川はわが意を得たりという感じで「そうなんですよ。自分をほめてやりたいです」と笑顔を見せた。

 細川の所属コースは、昨年の日本オープンの会場だった茨城GCだ。ここも難しいコースの東の代表だ。だから難コースの攻め方が分かっている。「フェアウエーキープが基本です」と最終日のインコースでは、10番と18番以外はドライバーを持たなかったという。

 そんな細川は難病指定の「潰瘍(かいよう)性大腸炎」と戦っている。いい薬も出てきていて、症状は収まっているらしいが、油断すればまた1日に何回もトイレに通うことになる。コースで5時間以上戦うゴルファーにとってはつらい病気である。

 東海クラシックで話を聞いた増田、細川。それぞれの40代の生き様がある。トーナメント会場やテレビ放送で見かけたら、ぜひ2人の味のあるゴルフを見てほしい。【町野直人】