石川遼(18=パナソニック)が「トリプルアクセル打法」に挑戦だ。日本男子ツアー初戦の東建ホームメイト杯は、いよいよ15日に三重・東建多度CC名古屋で開幕。石川は14日、マスターズ予選落ちの反省を踏まえ、アイアンのスイング改造に取り組んだ。軸のぶれない速くコンパクトな回転のスイングを求め、イメージはフィギュアスケートのトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)。新たな日本のシーズンを、新たなチャレンジからスタートさせる。

 気温10度以下の強風が吹き荒れたプロアマ戦後の練習場で、石川はアイアンを打ち続けた。開幕前日では異例のスイング改造。コーチの父勝美氏(53)から「トリプルアクセルくらいのスピードを出せ」とゲキを飛ばされながら、1時間約200球の打ち込みを敢行した。

 ゴルフとフィギュアスケート。畑違いのスポーツでも「回転+体重移動」の部分では共通点もある。飛距離と精度を求め、ヘッドスピードを上げるため、スイングの軸をぶらさず、コンパクトに回転させることを重視。浅田真央の3回転半の滞空時間は0秒45と、タイガー・ウッズのスイングは0秒74といわれる。一概に比較はできないが、石川は「トリプルアクセル?

 (スイングの)回転のことです」と言う通り、回転の速さのイメージを氷上の大技と重ねている。

 今年も2月から米ツアーに参戦。マスターズで2年連続予選落ちも、世界のトッププロのスイングを目の当たりにし、新たな課題を得た。今回の「トリプルアクセルスイング」は、ウッズの肩が開かないダウンスイング、マスターズ3位アンソニー・キムの回転の速さなどを参考にした。「インパクト付近で上体が伸び上がる傾向があった。前傾姿勢を保って、スムーズに速く、きれいな円を描いたスイングにする」と狙いを説明した。

 開幕直前の「突貫工事」のリスクは高い。そんな中で「開幕戦への思いは他の選手の2~3倍はあるが、何十年先の上達を求めることも大切」と、常に高い目標を見据える。昨季までは新しい試みの直後に成績を落とすことがあった。それが今は「ある程度、スイングの土台が築けた。新たなものに取り組んでも試合に集中できる。不安はない」と言い切った。

 この日、尾崎将司から「簡単に(マスターズの)予選を通ったら面白くないよな。お前にとって、すごくいい経験だよ」と言葉を掛けられた。昨年の日本ツアー開幕前日は、マスターズで失敗したバンカーショットをひたすら練習した。夢舞台で得た課題を克服し、最年少賞金王になった。今年もオーガスタでもらった「宿題」をこなしながら、日本ツアーを盛り上げていく。若き賞金王におごりはない。【田口潤】